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互助家のひとびと

第103話~第105話 おじいちゃん、弟の家へ

★第103話「おじいちゃんのつぶやき」

おじいちゃんが電話をかけた先は、おばあちゃんと互助会です。

深い悲しみに襲われながらも毅然と手続きをし、弟を自宅に連れ帰ったおじいちゃん。おばあちゃんも言葉を失うほどショックを受けていましたが、おじいちゃんを優しく出迎えました。

弟の顔はとても安らかで、まるで眠っているようです。

おじいちゃんは弟を前に、さまざまな想いを巡らせました。

子供のころは弟とよくケンカをしたこと、就職して初めての給料で一緒に酒を飲んだこと。弟は結婚後、子供に恵まれなかったこともあってか、おじいちゃんの子供や孫たちをとても可愛がってくれました。

そんな弟との数々の想い出に加えて、会社員時代の同期・北山さんの死もおじいちゃんの脳裏をかすめます。

「お前まで、先に逝くなよ…」

おじいちゃんがぽつりとつぶやきました。(つづく)


★第104話「おじいちゃん、弟の家へ」

おじいちゃんは互助会の葬儀担当にホールの手配をお願いしました。そして、隣県にある弟の家へ。弟が生前に住んでいた小さな一戸建てです。

おじいちゃんが弟の家を訪れたのは、実に5年以上ぶり。気軽に訪ねるにはちょっと距離があり、足が遠のいていたのです。しかし、弟が育てた野菜を時折、互助家に送ってくれたり、たまには電話で話すこともあったり、おじいちゃんは弟の暮らしぶりを大体は知っていました。

家に足を踏み入れると、整然と片付けられた居間、古いながらも掃除の行き届いている台所、きれいに手入れされた庭―。

家の隅々まで見回したおじいちゃんは、弟が妻を亡くしてもここで「きちんと」生きてきたことをしみじみと実感しました。

「あいつは本当に立派だな。もっとここに遊びに来てやればよかったよ…」(つづく)。


★第105話「おじいちゃんの弟が遺した手紙」

おじいちゃんは弟の交友関係を全く知らず、弟の死を誰に知らせてよいのかわかりません。そこで電話帳やアルバムを見て、親しそうな友人・知人を探すことにしました。

居間の本棚に並んでいる数冊のアルバムを引っ張りだし、電話台の扉を開くと、目立つところにおじいちゃん宛の手紙が。

(…私への手紙?)

おじいちゃんが手紙の封を開けると、死後の整理にまつわること、自分の死を知らせてほしい友人・知人の連絡先が記されています。さらに、少しばかりの遺産はおじいちゃんに譲るので、家族のために使ってほしい、と。

(これは、まるで遺言書じゃないか…)

弟は定年退職後、年に1回、こういった手紙を書くようにしていました。妻に先立たれた弟は、自分に何かがあったときのことを心配していたのです。(つづく)




 

 
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