★第190話「おじいちゃんの生前葬（2）」

おじいちゃんに続いて来賓の挨拶が終わり、写真のスライド上映が始まりました。生前葬に集まってくれた招待客や家族との思い出を中心に、おじいちゃんの人生を振り返ります。子供の頃から茶目っ気たっぷりなおじいちゃんの姿に、会場からクスクスと笑い声が。思いがけない自分自身の登場に声を上げる招待客もいます。

そしてラストの1枚は、楽しそうに蕎麦打ちをしているおじいちゃん。「互助さんは多趣味だなぁ」「蕎麦打ち、いいわね～」などと話している招待客の前に食事が運ばれ、1枚のざる蕎麦もあります。

おじいちゃん「皆様の健康と長寿を願って打った蕎麦です。どうぞお召し上がりください！」

招待客は会食と歓談を大いに楽しみ、やがてギター演奏の時間に。おじいちゃんと仲間たちは若かりし頃の思い出の曲、サイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』など3曲を披露しました。心のこもった演奏と温かな音色に、招待客は拍手喝采！　蕎麦に続いて、おじいちゃんの精一杯のおもてなしを喜んでくれたようです。
（つづく）


★第191話「おじいちゃんの生前葬（3）」

ギター仲間の一人が友人スピーチを終えると、再び歓談のスタートです。生前葬の閉式を前に、おじいちゃんはテーブルを周って一人ひとりに挨拶をしようと腰を上げました。すると突然、場内の明かりが消えて真っ暗に…！

おじいちゃん「な、なんだ!?」

慌てているのは、おじいちゃんただ一人。招待客は受付時にこの展開を知らされていました。そう、これはおばあちゃんたち家族全員で仕掛けた、おじいちゃんへのサプライズなのです。

間もなくビデオ上映が始まり、スクリーンに「おじいちゃーん！」と呼びかける子供たちの姿が。おじいちゃんの亡き弟に代わって、互助家の面々がボランティアで訪れている施設の子供たちです。

おじいちゃん「え…？　これはいったい…」

思いがけない子供たちの登場に、おじいちゃんはびっくり！　ぽかんと口を開けながらスクリーンに釘付けになっています。

（つづく）


★第192話「おじいちゃんの生前葬（4）」

家族からおじいちゃんへのサプライズは、施設の子供たちからのビデオメッセージです。

一人ずつ順に自筆のおじいちゃんの似顔絵を手にして
「いつも明るくて楽しいおじいちゃんが大好きです！」
「おじいちゃん、けん玉を教えてくれてありがとう！」
「おじいちゃんのおかげでピーマンを食べられるようになったよ！」
など、一言ずつメッセージを。さらに会場では、お父さんが家族を代表してマイクを手に取りました。

お父さん「皆様もご存知の通り、父は明るくたくましい人です。うっかりちゃっかりしたところもありますが（笑）、明るく暖かく家庭を照らし、ここぞという時には不屈の精神で家族を支えてきてくれました。私たち家族はみんな、お父さんに感謝しています。いつもありがとう！　これからも健康で長生きしてください」

おじいちゃんは驚き、泣き笑いしています。招待客の温かな拍手はしばらく鳴り止まず、生前葬は感動のうちに幕を閉じました。
（つづく)