日本は超高齢化社会を迎えて、かつてないほど高齢者の割合が高くなっています。
全人口のうち65歳以上の割合が28%を超えており、3人に1人が高齢者となっています。
こうした中で「終活」という言葉が2009年に生まれ広まっていきましたが、まだまだ具体的にどう進めればいいのか、よく分からないという人も少なくありません。
「終活アドバイザー」は、そうした人たちに終活の進め方を具体的にアドバイスし、老後の心配事を減らすためのサポートをする資格です。
その他にも、専門家の紹介や自治体窓口への動向、セミナーの講師など様々な役割を果たすようになっています。
高齢者にとって頼りになる存在として、これからも活躍のシーンが多くあると予想されています。
この記事では、終活アドバイザーはどういった資格で、どのような仕事をするのか、資格取得のメリットや取得方法などを詳しくご紹介します。
目次
終活アドバイザーとは?
終活アドバイザーとは、どのような資格でしょうか。具体的にみていきましょう。
終活アドバイザーとは
終活アドバイザーとは「NPO法人ら・し・さ」という団体が発行している民間資格の名称です。
「NPO法人ら・し・さ」はライフプランの専門家として、人生の後半期に訪れる介護、医療、葬式、お墓、相続などの問題について情報提供や相談を行っています。
「終活アドバイザー協会」を運営して、終活アドバイザーの資格の認定を行っています。
終活とは
自分の死後家族に負担をかけないために、生前から自分の人生を振り返り、身の回りを整理したり、記録を残したりしておくことです。
終活を通じて、今後の自分の生き方をしっかりと考えるきっかけにすることにつながり、家族に安心感を与えることができます。
また、終活によって自分の想いをまとめておくことで、自分の死後のことに自分の意思を反映させられようになります。
終活に何をするのか
終活では、具体的にどのようなことをするのか、一つずつ見ていきましょう。
<不用品の仕分け・処分>
これまでの長年の生活でため込んでしまった不用品を仕分けし処分します。
衣類や書籍、書類、食器、電化製品などの身の回り品の他、使っていないサービスや口座、カード類なども併せて処分します。
<財産の整理・記録>
保有する現金、不動産、有価証券、保険等の財産を洗い出し記録に残しておきます。
ローンなどの負債があれば、それも忘れずに内容を記録しておくようにします。
<葬儀・お墓の要望>
自分の葬儀のスタイルを生前に決めておく人が増えています。
葬儀社と打合せしておき、その旨を家族に伝えておくといいでしょう。
お墓や墓地の手配をしておくと、家族の負担が軽くなります。
<デジタルデータの整理処分>
PCやスマートフォンに大切なデータを記録している場合は、その記録を残しておきます。
サブスクリプション等の会員サービスは、必要なものに絞ってその情報を残しておき、不要なものは早めに解約するのがおすすめです。
<連絡先リストの作成>
もしもの時に連絡する親せきや友人、会社の関係先などの情報をリスト化しておきます。
入院したとき、葬儀のときなどに連絡先がわからないと家族にとって非常に大きな負担になります。
<エンディングノートの作成>
以上のような情報を、一冊にまとめられるのがエンディングノートです。
終活に必要な項目が揃っているので、エンディングノートを埋めていくと終活にやるべきことは、ひととおりできるようになっています。
終活の進め方
1.仕分けをして処分する
終活の第一段階は不用品の仕分けと処分です。
年齢とともに身の回りの品が増えていくため、この段階で挫折する方も少なくないようです。
ポイントとしては、いっぺんに全部やろうとしないこと。
数回に分けて計画的に作業するようにします。
また、自分一人で全部やろうとしないことも大切です。
不要かどうかは自分しか判断できませんが、作業は家族に手伝ってもらうようにすることも考えるといいでしょう。
場合によっては、業者に依頼することも選択肢に入れておくといいかもしれません。
2.整理をする
不用品を廃棄した後は、残すものを整理していきます。
残すものを絞ることで、日常生活に使うものは、取り出しやすいところに置けるようになります。
通帳やカードなど、お金に関するものは盗難のリスクがあるので、保管場所には注意が必要になります。
日常生活で使うものと、しっかりしたところで保管するもので分けておく、あるいは、貸金庫などを利用し家に置いておかないようにするといいでしょう。
3.記録を残す
記録を残すことで遺品整理がしやすくなり、家族に想いを伝えることができます。
エンディングトートや遺言書として、自分の意思や考えを記録し残していきます。
<エンディングノートに残す>
自分の死後について要望や想いを書き記し、自分の記録を残しておくのがエンディングノートです。
そこには、自分の遺品の扱いや財産の継承についても記しておくことができます。
エンディングノートは、いきなり書こうとしても難しいですが、身の回りや財産が整理されていると、書きやすくなります。
<遺言書を作成する>
相続に関しては、エンディングノートに記載しても法的な効力はありません。
しっかりと遺産分割して継承したい場合は、遺言書を作成する必要があります。
遺言書の作成には、相続財産のリストアップが重要です。
保有している財産がきちんと整理されていると、遺言書の作成もスムーズになります。
終活アドバイザーの主な仕事
終活アドバイザーの主な仕事にはどのようなことがあるのか、具体的にチェックしていきましょう。
エンディングノート作成に関するアドバイス
エンディングノートは、終活をしていく上で大切な指標となるものです。
自分のこれまでの人生を振り返り、家族や友人に伝えたいことや、自分が保有する財産の死後の分け方などの希望を書き記しておきます。
遺言書のような法的効力はありませんが、気軽に書き残しておくことができます。
エンディングノートの書き方には決まりがありません。
そのため、どこから手を付けていけばいいのか悩んで手が止まってしまう人も多いようです。
終活アドバイザーがアドバイスをしていくことで、少しずつどう書けばいいのかが見えてくるようになります。
専門家への紹介やコーディネート
終活を進めていくと、相続や遺言書のことなど、より詳しい知識を持った専門家と相談したほうがいいケースもあります。
このような場合に、終活アドバイザーが弁護士や税理士などの専門家を紹介してコーディネートすることがあります。
日常生活では、こうした専門家との接点がないため、相談の仕方から分からないという人も多いので、終活アドバイザーのサポートが役に立ちます。
自治体等の窓口への同行
高齢者の中には、自治体窓口に行った手続きをすることが分かりにくく、億劫と感じる人も多いようです。
承諾を受けて終活アドバイザーが同行し、手続きのサポートをすることで、スムーズに手続きを進めることができます。
セミナー講師
近年では、自治体や高齢者向け施設などのイベントで、終活に関するセミナーが増えています。
終活アドバイザーが講師として仕事を依頼されるケースも多くあります。
終活アドバイザーの知識と経験を活かしてわかりやすく伝え、参加者からの相談に応えたり、アドバイスをしたりすることで、終活の後押しをします。
終活で悩む人の相談相手
医療現場や金融窓口、葬儀担当、自治体担当としての業務に就いている人は、高齢者と接する機会が多くあります。
終活アドバイザーの資格を取得し、自分の本業と組み合わせて終活に悩む人の相談相手としてアドバイスをすることができます。
終活アドバイザー資格取得のメリット
終活アドバイザーの資格を取得することで、どういった「メリット」があるのでしょうか。
自分の身内の終活に活かせる
終活アドバイザーの資格を取得するためには、人生の終わりに向けた様々な知識を勉強することになります。
このことで、自分自身だけでなく、家族や身内の終活に必要な知識を提供したり、手伝いをしたりすることができます。
仕事に活かせる
終活アドバイザーの資格を取得しようとする多くの方は、日頃から仕事で高齢者と接して相談を受けています。
終活アドバイザーとして正しい知識を身につければ、自信を持って相談に対応することができます。
自分の人生に活かせる
自分の長い人生を充実させるために、終活アドバイザーの知識を活かし役立てることができます。
こうしておけばよかった、という後悔を少なくし、自分の将来に向けてしっかりと準備をすることができるようになります。
終活アドバイザーの歴史
終活という言葉が広く知られるようになったのは2009年ですが、2003年(平成15年)に、「特定非営利活動法人 終末サポートRASHISA ら・し・さ」が発足し、人生の後半に自分らしく生きるためのサポート活動をするようになりました。
その後、この法人は「特定非営利活動法人 ら・し・さ」と名称を変更し、2016年(平成28年)に「終活アドバイザー協会」を発足させました。
この協会が主導する形で、終活アドバイザーの資格認定・運営、テキストの監修、セミナーといった活動が進められています。
協会の活動を通じて、終活アドバイザーが次第に広まっているところです。
終活アドバイザーになる方法と費用
終活アドバイザーになるには、どうすればいいでしょうか。
資格を取るための「方法」と「費用」について解説します。
通信講座と必要な費用
終活アドバイザーの資格取得には、通信講座を受けて勉強をします。
受講期間は「3~4カ月」です。
通信講座なので、自宅で自分の都合に合わせて勉強することができます。
講座では、終活の意義や、お金に関する知識(資産、不動産、介護保険、年金、相続など)、医療や介護、葬儀やお墓に関する知識、エンディングノート、成年後見などの制度などについて学んでいきます。
通信講座でひととおり勉強した後、在宅で試験を受けて合格すれば資格を取得できます。
もし、不合格でも受講期間である最長8ヶ月以内であれば、何度でも試験を受けることができます。
取得にかかる費用として、通信教育の受講費用が「3万円程度」と、協会への入会金「4,000円」、年会費「6,000円」がかかります。
終活アドバイザーに向いている人とは
終活アドバイザーは、どのような人に向いている資格でしょうか。
医療・介護業界で働いている方
医療や介護の現場では、終活に関係することの相談を受けることが多くあります。
利用者が安心して生活できるよう、医療や介護のケアだけでなく、話を聞いて適切なアドバイスをしてあげると喜ばれます。
葬儀業界で働いている方
葬儀業界では、終活に関するセミナーを多く開催しています。
そこで講師として話しをした後、個別の相談にのることが可能です。
終活の専門家として信頼され、話を進めることができます。
金融・保険業界、法律関係で働いている方
金融や保険業界で働いている人にとって、終活アドバイザーの知識があれば、ライフプランニングや資産運用のアドバイスに活かすことができます。
また、法律関係で働く人であれば、相続の相談も多くあるので、幅広く対応することができるようになります。
終活アドバイザーの将来性
日本社会は、ますます高齢化が進み、様々な課題に直面することが予想されます。
その中で、いきいきとした生活を続けていくためにも、幅広い知識を持っていることが大切になります。
終活アドバイザーは、終活を通じて、高齢者やその家族が充実した生活が送れるように、多様なアドバイスをすることができます。
終活アドバイザーが活躍する場面は、これからも増えていくと思われます。
終活に関するその他の資格
終活アドバイザー以外にも、「終活に関する資格」があります。それぞれ簡単に紹介します。
終活カウンセラー
終活カウンセラーは、「一般社団法人 終活カウンセラー協会」が主催し認定している民間資格です。
終活カウンセラーは、終活の相談を通じて、高齢期の生活について様々なアドバイスを送ります。
<資格取得費用>
終活カウンセラーでは、2級は「15,000円(税込)」でテキスト代、講座料、資格認定料、会員証発行費、初年度年会費が含まれています。
1級取得には事前審査費「3,000円(税込)」がかかり、会場コース受験料「45,000円(税込)」、オンラインコース受験料「50,000円(税込)」が必要になります。
終活ガイド
終活ガイドは「一般社団法人終活協議会」が認定している資格です。
終活での問題や悩みを解決できるようにサポートすることが目的となっています。
<資格取得費用>
終活ガイド初級(3級)はウェブ上から無料で受講して資格取得可能です。
2級であれば、「5,000円(税込)」、上級(1級)は「50,000円(税込)」と年会費「3,300円(税込)」が必要となります。
終活ライフケアプランナー
終活ライフケアプランナーは「日本能力開発推進協会(JADP)」が認定している資格です。
保険、金融、不動産、葬儀、医療、福祉など終活に関連するケアが目的となっています。
<資格取得費用>
受験料が「5,600円(税込)」です。全カリキュラム修了後に受験します。
相続終活専門士
相続終活専門士は「一般社団法人 相続終活専門協会」が主催している資格です。
相続や終活に関連する問題についてアドバイスすることを目的としています。
<資格取得費用>
受験費用は「11,000円(税込)」で、ネット経由で受験申込みをします。
試験はマークシート形式で実施されます。
【終活アドバイザーとは?】仕事内容や資格取得について解説 まとめ
これからも日本社会の高齢化は続き、終活に取り組む人も増えていくことが確実です。
「終活アドバイザー」は、幅広い知識と経験をもとに、終活に役立つアドバイスやサポートをしていける資格として、これからさらに広まっていくことでしょう。
特に高齢者と接する機会の多い業務で働く人にとっては、終活アドバイザーの資格を取得することで専門家として信頼を得ることになり、業務に活かすことができます。