2年ほど前に手元供養についての記事を書きました。その頃はまだ決して広く普及している言葉ではなかったのですが、短い期間であっという間に一般的な供養方法になっています。最近ではふるさと納税の返礼品にも登場。手元供養の現在地を探ってみましょう。
社会ニーズに合致した手元供養
ここ最近、週刊誌やテレビなど複数のメディアでは、終活に関する話題が取り上げられることが多くなっている気がします。多死社会を迎えつつある日本では、あらゆる世代を超えて、健康とともに最も興味・関心が高い分野なのかもしれません。取り上げられる話題の中にはお墓に関するものも多く見かけます。「樹木葬」「納骨堂」など、旧来のお寺や霊園に設けられた墓所に埋葬する方法以外の埋葬が脚光を集める一方で、「墓じまい」のように、先祖代々の墓を閉じる行為も増えてきています。それらは共通して次のような社会的要因が背景にあると筆者は考えています。
・家の概念が崩壊したことで、「墓」と「家」が切り離された
・信仰をもっていないため宗教的儀式は望まない人が増えている
・故人の弔いは、身内だけで行いたいと考える人が増えている
・お墓を継承し続けることへの不安を感じる人が増えている
・お墓にかける予算を減らしたい人が増えている
終活の普及が後押し
さまざまな理由から旧来の埋葬方法をとらない人が選択する埋葬の一つが「手元供養」です。およそ20年前に京都のある人物の想いから始まった手元供養には、遺骨や遺灰を加工して供養の対象となる物を作る、遺骨や遺灰をアクセサリの中に入れて身に着ける、自宅におけるような小さなお墓を用意する、装飾された骨壷を自宅に飾るなど多様な方法が生まれています。ここまで手元供養が普及している背景にはやはり終活の普及が大きく影響しているのは間違いないでしょう。以前は、家族や自分の死を考える、その準備をするという概念は決して一般的ではありませんでした。終活という考え方の普及に伴い多くの人が、家族や自分が死を迎える、近づく前に、死んだ後のことを考えるようになったと筆者は考えています。準備する、考える期間が増えたことで、多くの選択肢が目に留まる、選べるようになった、ということではないでしょうか。
メモリルジュエリーは王道なのかも
手元供養が広がり続けていることは、大阪府枚方市がふるさと納税の返礼品にメモリアルジュエリーを用意したことでも分かるような気がします。メモリアルジュエリーは17世紀ヨーロッパで誕生した、故人の遺灰などを納めて身につけるアクセサリーのことです。手元供養の元祖とでも言えそうですね。手元供養には「大切な人を失ったことを少しでも和らげたい」「故人を常に身近に感じていたい」という遺族の想いを叶えるという重要な一面もあります。メモリアルジュエリーは故人を常に供養することができるので、供養本来の意義を考えると、まさに王道なのかもしれません。
少子高齢化が進む中、政府は地方創生を訴えていますが、地方から都市への人工流入は止まりそうもありません。都市に出てきた人が地方の残した墓所を振り返ることは多くはないでしょう。そして都市では墓所にする土地が圧倒的に不足している。このような社会環境下では手元供養という埋葬方法が近い将来最も一般的な埋葬になる可能性は十分にあると思います。