家族葬と称する身内だけで行われる小さなお葬式が広がりだす前から、身内だけのお葬式にこだわってきた宗教団体があります。それは公称827万世帯の会員を擁している創価学会です。創価学会の会員が亡くなったときのお葬式は「友人葬」と言われ、他の仏式のお葬式とは若干異なるスタイルで行われています。
友人葬とはどんなお葬式
ご自身が創価学会員でなくても、これだけの会員数ですから、身近なところで友人葬に出会う可能性もあるかもしれません。そんなときのために、友人葬の基礎をおさえておきましょう。
お葬式の流れ自体は他の仏式とほぼ同じ次のような流れですが、最大の特徴は、仏教のお葬式であるのに僧侶を呼ばないことです。
- 開式の辞
- 読経
- お焼香
- 御祈念文・題目(南妙法蓮華経)三唱
- 弔電紹介
- 導師挨拶
- 謝辞
- 題目三唱
- 閉式の辞
- 出棺
導師挨拶という耳慣れない式次第がありますね。この導師がみそなのです。創価学会では僧侶の代わりに、故人と親交のあった古参の創価学会員が導師となり読経を行うのだそうです。創価学会のホームページによると、『「葬儀で僧侶が引導文を読み上げないと成仏しない」、という考え方は、仏教の開祖である釈尊(釈迦・仏陀)の考えにはありませんし、仏教の本義に照らして正しいものとはいえません』と言い切っています。確かに葬式仏教の歴史は、檀家制度の始まりからですから歴史も浅いし、仏教の本義に則しているのかどうかも諸説ありそうですね。僧侶を呼ばないので、お布施は必要ありません。ただしその分戒名もないそうです。戒名についても学会は『「故人に戒名が必要である」という考え方も釈尊にはありません』と断言していますね。確かに故人に与える戒名は日本以外ではあまり見られません。
香典もいらない
創価学会はその方針に「儀礼的な香典は持参しなくても良い」というものを掲げています。ですので、香典を持参する必要もないようです。でも、例え身内だけで、僧侶がいないのでお布施も必要ない、といっても会場費用や飲食費などが多少はかかってきます。一般葬では香典で相殺することが可能ですが、それができないため喪家の全額持ち出しになりますね。創価学会員は当然香典を持参しないでしょうが、会員以外の参列者は、自分の判断で決めていいのではないかと筆者は思います。創価学会の面白いところは、「地域の文化・慣習は尊重することが大切」とも謳っていることです。「学会の方針はあるけども、例外はOKだよ」という逃げ道をちゃんと確保してくれていますね。
友人葬が始まったのには理由はあった
友人葬が始まったのは1991年だそうです。この年は創価学会が激震に見舞われた年でした。創価学会が属していたのは日蓮正宗でしたが、この年宗門から破門されるのです。どうやら破門される前は、ちゃんと日蓮正宗の僧侶を呼んでお葬式を行っていたようです。つまり破門されたがゆえに、日蓮正宗の僧侶を呼べなくなり、そこで僧侶不在の友人葬が生まれたのだと推察することができますね。
始めたきっかけは何であったとしても、釈尊の教え云々が後付だったとしても、「故人を送る『まごごろ』を大切にするお葬式」というお葬式本来の目的が具現化されたお葬式であることには間違いなさそうです。最近では、創価学会員以外からの問い合わせも増えているとか。多様化する現代のお葬式の1スタイルとして広がりを見せるかもしれません。