お葬式の祭壇に飾られる遺影。喪主や喪家になったときには、あまり深く考えずに当然あるべきものと考え、どんな写真を選べば良いか、が一番の悩みどころになるでしょう。そんな急を要する場面ではない今だから、少し遺影について一緒に考えてみませんか。
遺影のルーツはいつだろう
お葬式の祭壇に故人の遺影を飾るようになったのはいつからか、調べてみたんですが諸説もなく、実はよく分かりません。しかし、祭壇が現在のような形になったのは戦後だと言われていますし、そもそも現代のように写真が一般的ではなかった時代に、写真の遺影は存在しなかったと考えられます。もっとも、古くは写真ではなく肖像画の遺影が多かったようです。しかし、肖像画を描いてもらうという風習が庶民にあったとは思えません。これは想像でしかないですが、明治以降戦前の日本で、名家・旧家といった富裕層のお葬式で、お葬式の文化とか慣習としてではなく、故人の肖像画や写真を飾ることがあったのかもしれません。戦後になり数多くの葬儀会社が活動するようになり、さらに写真が庶民の生活に身近な存在に降りてきたことが相まって、定番化された。つまり葬儀会社がつくりあげた慣習ではないかと考えています。
日本以外では一般的ではなさそうだ
偶像崇拝を禁止しているイスラム教では、故人の写真を飾ることは禁忌だという説があります。イスラムは宗派も多く、また日本同様に写真文化は新しいものなので、新たしい風習として受け入れるべきだという説を唱える人もいるようで、全てがNGではないようですが、少なくとも一般的ではなさそうです。
また土葬の国では、お墓に埋葬するまで、故人と直接相対することができるので、遺影は必要なく、その慣習もない。という話も聞きます。まぁ確かにそうですね。日本の現代のお葬式の流れは、故人を火葬した後に遺骨と遺影をセットにして祭壇に飾り、葬儀式、告別式を行うわけですから、遺影の必要性は理解できます。故人の顔がそこにあるのに遺影というのは確かにおかしな気がしますね。
東南アジアや中国では遺影は一般的だと聞きます。その慣習と日本の現代の慣習に、何か関連性があるのか、ちょっと調べるには大変そうですが、興味深いですね。
遺影には何を選んでもいい
はじめにも書いたように、古くは肖像画を遺影としていました。ですので、写真でなければいけないということはありません。また、イラストやマンガでも問題ないようです。写真も、モノクロが中心だったものが現代ではカラーに、また、故人の表情もさまざまにと変化しています。遺影は故人が元気だったころを思い出すための『きっかけ』だと思います。お葬式の会葬者の皆さんが、故人を思ってくれるのなら、どんなものでもいいと思います。