お葬式で正面に鎮座している装飾された壇を祭壇と言います。遺影や供物を飾り、周りを供花で囲み、故人を偲ぶ目的があります。元来の祭壇は、お葬式だけでなく、神様や祖先などに犠牲や供物を捧げて祈るための舞台でした。祭壇は宗教や国、地域によってもさまざまです。ここでは、そんな祭壇を考えてみましょう。
祭壇のルーツ
旧約聖書の出エジプト記に土でつくられた祭壇の記述がありますが、これが最古の文書のようです。ヘブライ人は偶像崇拝でしたので、祭壇に神の像を飾り、供物(ときには人身御供も)を捧げ祈る場所でした。映画十戒にモーセがシナイ山に登っている間に、不安になったヘブライ人たちが祭壇を作り、黄金の像を飾り捧げ物をするシーンがありましたね。
常設の祭壇
キリスト教は、教会の祭壇が最たるものです。材料は石と定められているようで、非常にきらびやかな装飾がされた祭壇も多く見られます。ミサを行う舞台となります。
神道の祭壇は、(最近の家では、あまり見かけませんが)神棚です。棚の上に小さな祠を設けて、その家にとっての神様を祀ります。
仏教の祭壇は、仏壇と言いますね。家庭内に設置して、故人、祖先の戒名が書かれた位牌を祀っています。生花や供物が飾られ、手前に線香立てとお鐘(りん)が置かれます。
お葬式の祭壇の種類
次にお葬式のときの祭壇の素材を説明します。
【白木祭壇】
仏式のお葬式で最も一般的な白木で作られた祭壇です。戦前に白木でつくった輿にお棺を入れて墓地まで運ぶ「野辺送り」という見送りかたが、形を変えて現在の祭壇になったといわれています。白木祭壇は、儀式的なイメージが強いかもしれません。また仏教以外にはあまり馴染みません。
【花祭壇】
花で囲まれた祭壇で、テレビで見る芸能人などのお葬式で見かけます。白木祭壇とは異なり宗教色がほとんどないため、宗教やお葬式のスタイルを問いません。
【神式祭壇】
素材は白木祭壇同様に白木が使用されることが多いのですが、形状が異なります。また、祭壇に神道の三種の神器(「鏡(八咫の鏡)」「刀(天叢雲剣)」「勾玉(八尺瓊勾玉)」)を必ず飾ります。
【キリスト教式祭壇】
キリスト教のお葬式は本来教会であげるものです。そのためキリスト教式祭壇は教会の常設祭壇に白いクロスをかけます。
【オリジナル祭壇】
最近では金属やガラスなどの他では見られない素材を使って作った、完全にオリジナルな祭壇も見かけます。でも、そのお葬式1回だけのために、オリジナル祭壇をつくる意味はあまり理解できません。
祭壇の飾り方
常設の祭壇もお葬式の祭壇も、宗教・宗派によって飾るものも飾り方も違います。そしてその飾りには、それぞれ特別な意味があるので、自分で勝手に飾ってはいけません。自分の家の宗教、宗派ではどのような意味があるのかを、家族などからしっかり聞いておくことをお勧めします。