お通夜やお葬式の後に、すべての会葬者が通夜振る舞いやお斎(精進あげ)で食事をとるわけではありません。
帰り道で「お腹がすいたから食事をしていこう」と考える人がいても不思議ではありません。
でも喪服のまま飲食店に入ってもいいものかどうか、何かマナーはあるのでしょうか。
インターネットで調べると、似たような質問と回答が繰り返されてきていることがわかります。
皆さん不安なんですね。
最近ではある出来事がこのテーマをクローズアップさせることになりました。
喪服と飲食店の問題を考えてみましょう。
お寿司屋さんで塩を撒かれた
きっかけは2017年5月14日の朝日新聞朝刊の「声」の欄に掲載された75歳男性の投書でした。
内容を要約すると次のようになります。
郷里で親族のお葬式に参列した男性は、帰路空腹を覚えてお寿司屋さんに入った。
店主の視線が気になったが、食事を済ませて店を出ると店の中から『塩を撒いておけ』という言葉が聞こえた。
それ以来喪服で飲食店に入るときはネクタイを外すようにしているが、飲食店でそこまで喪服が忌み嫌われることに、未だに納得できない。
この記事が掲載された14日の朝に「それは知らなかった。本当にそれがマナーなのか」という内容のツイートが発信されると、店主の態度に対する賛否のリツイートが飛び交い大激論となりました。
また、5月28日にはJ-CASTニュースがこの1件を取り上げたことで再燃し、2017年5月末時点で「喪服 寿司屋」で検索すると上位にはこの出来事に関連する記事がずらっと並ぶ状況となっています。
お葬式帰りのマナーとは
お葬式から帰るときの明確なマナーは、特段存在していないと思います。
その理由は喪服とはその名の通り「喪に服する」ものであり、それを身にまとっていることを考えれば誰しも自然と適切な行動をとるから、あえてマナーを明文化する必要はないからだと筆者は考えています。
飲食店に寄ってもマナー違反ではない
お腹が空くのは自然の摂理です。
とくに遠隔地から参列した人などは、どこかで空腹を満たす必要があります。
また男性はネクタイを外すようにしている、と言っていますが女性はそういうわけにはいきません。
お葬式に関するマナーとは、あくまでも喪家や遺族に対する礼儀、お葬式やお通夜の会葬者同士の礼儀などであって、ひとたび会場を離れた人が社会的に守るべきマナーは存在していません。
あえて言うなら、喪服のままカラオケボックスやゲームセンターなどで遊びに興じるとか、酔っ払うまでお酒を飲んだりすることは絶対にNGですが、それらは教えられなくても喪服のまますることではないことは皆さんわかっていることですよね。
中にはこんなお店もある
商売なので、縁起やげんを気にする人はいそうですが、ルール違反でもマナー違反でもないので、堂々と飲食店に入って構わないと思います。
でもたとえ少数だとしても、そんな店にあたってしまい、気分を悪くしたくはありませんよね。
もしも石橋を叩いて渡りたいなら入店するときに一声「入ってもいいですか」と声をかけて店側の反応を探ることでしょう。
ちなみにお寿司屋さんに関する議論は、圧倒的に店主批判が多いのです。
お店側には入店を断る権利があります(法的に認められています)。
しかし一度客として招き入れてサービスを提供したら客が満足するサービスを提供する努力をしないといけないので、このお寿司屋さんは、認識も配慮も足りてなかったんですね。