日本の夏の風物詩ともいえる「お盆」ですが、昨年2020年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、お盆休暇を利用して家族が久しぶりに顔を揃え、賑やかにご先祖様をお迎えするという光景を多く見ることができない年でした。2021年も、東京都では感染者数が増加に転じ第5派到来といわれる状況で、新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置の指定が解かれるのは困難といわれています。
このような状況下では今年のお盆もリモートが増える可能性が高いと感じています。筆者は、家族が一堂に会するという日本の文化が、段々と廃れていくのではないかという一抹の危機感を覚えますが、文化を残し続けるためにも、まずは毎年のお盆の暦はしっかりとおさえておきたいものです。
お盆の時期は地域によって異なる
お盆の暦は、1873(明治6)年に太政官布告で太陽暦(新暦)が採用されるまで、太陰暦(旧暦)の7月15日がお盆の中日でした。太政官布告ではお盆の中日も新暦の7月15日を中日にすることを原則とすることが謳われましたが、農産地を中心に7月半ばは繁忙期にあたるために、お盆の期間にすることが難しかったのです。そのため、政府が置かれた東京以外の地方の多くで、月遅れお盆と称する8月15日を中日としたお盆の暦が慣習となっています。
もっともこの暦は、次に記す各地のお盆の暦を見てもお分かりになるように、必ずしも行政区域単位で共通となっていません。例えば同一市域であっても、この町は7月15日だけど、こっちの町は月遅れというように地域性に富んでいて、土着性が強い祭事であることが分かります。また、現代は人の動きが盛んなので、都市部に移り住んできた人が故郷のお盆の暦を受け継いでいるために、周囲は7月15日が中日でも、その家だけ月遅れの8月15日が中日、というケースもあるようです。
2021年のお盆の暦
2021年のお盆の暦は、それぞれ次の日程となります。
① 新暦の8月15日が中日
お盆の期間は、8月13日(金)から8月16日(月):次の②から④を除くほぼ全国
② 新暦の7月15日が中日
お盆の期間は、7月13日(火)から7月16日(金):東京都、福島県、山形県、千葉県、函館市、横浜市、静岡市、栃木市、金沢市などの一部
③ 新暦の8月1日が中日
お盆の期間は、7月30日(金)から8月2日(月):東京都西東京市の旧田無市域、小金井市、国分寺市、府中市、調布市の旧神代町域、小平市、岐阜県中津川市の旧付知町および旧加子母村などの一部
④ 旧暦の7月14日(今年は8月21日)が中日
お盆の期間は、8月20日(金)から8月22日(木):沖縄、奄美地方など
沖縄、奄美はお盆を旧暦の7月13日から15日に行うという慣習が残っていて、呼称も「お盆」でなはなく「旧盆」と言います。そのために、新暦の暦にしたとき毎年お盆の3日間は日が変わるので注意が必要です。
お盆の由来
お盆には、初日に墓からご先祖様や故人の霊を、迎え火を焚いて自宅に迎え、最終日には送り火を焚いて墓に送るという大きな流れがあります。自宅に迎えた霊は、祭壇に並べる位牌に宿り、祭壇では線香やお香を焚き、念仏を唱えたりするので、仏教の祭事である仏事と思われがちですが、実態は日本古来の祖霊信仰と仏教が融合したもので、仏教色、宗教色は薄い祭事なのです。ただし「お盆」という言葉の由来は、仏教の行事である「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といわれる行事だといわれています。この行事は中国の南北朝の時代(西暦500年代)に梁という国で初めに行われたという説が一般的で旧暦の7月15日を中心に7月13日から7月16日までの4日間に行われ、父母や先祖の霊を供養したり、親族以外でも故人を偲ぶ行事です。この「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が日本に伝承され、600年代、700年代に宮中の公式行事として開催されたという文献も残っています。この仏教行事が、日本で古来より行われていた先祖の霊を祀る行事と合体した民間行事として現在の「お盆」の形になり、広く民衆に定着していったといわれています。
7月15日が中日の地域のお盆は来週に迫っています。全国的に多い月遅れお盆も、あとひと月ほど。新型コロナウイルス感染症が落ち着かない限り、国内の移動には躊躇いを覚える人が多いでしょう。ワクチン接種も遅れ気味なので、今年もリモートでお盆を迎える家庭が多いかもしれません。帰省できないときは、何か美味しいものでも送るのが良いと思います。