通夜や葬儀のときに女性が身に着けるアクセサリーについては、これまでもマナーに関する記事の中で簡単に触れていますが、今回はアクセサリーだけに絞って少し掘り下げてみたいと思います。
正装とアクセサリー
少し大げさにいうと、通夜や葬儀は儀式を行う場の1つです。もっとも最近は儀式色を極力なくした小さな葬儀が増えていますが、それは一旦おいておきます。儀式の際に身にまとう服装は正装(略式も可)であることがマナーの基本です。そこでまずは、葬儀に限定せずに、正装とアクセサリーについて考えてみます。
和装(着物)の場合
どのような場でも和装にはアクセサリーを着けないというのが基本マナーとなっています。その理由は、指輪、ネックレス、イヤリング、ピアスなどのアクセサリーは西洋から日本にもたらされた服飾文化で、それ以前の着物文化には髪飾り以外のアクセサリーは存在していません。存在しなかったのですから、身に着ける習慣も文化もなく、その慣習が現代まで続いています。そもそも着物はアクセサリーを身に着けることを前提にした服装ではないので、身に着けないほうが見栄えが良いという現実的な理由もあります。最近は着物に似合うアクセサリーなども販売されていますが、見栄えが良いか悪いかは主観ですので、やはり見た目の点からも何も着けないほうが無難だと思います。
洋装の場合
和装とは逆に、女性が洋装の正装を身にまとう場合はアクセサリーを着けることが正式なマナーとなっています。とくに欧米ではアクセサリーは自分を飾るだけではなく、相手を敬うという意味があるため、アクササリーなしの正装は失礼にあたる(マナー違反)とされています。
通夜、葬儀の場でのアクセサリー
通夜や葬儀のマナーのベースは正装におけるマナーです。それに、弔いの場であるという特殊性が付加されます。それは、自分の身を飾るものではないということ、そのために華やかさを避けることです。
和装の場合
正装ですからアクセサリーなしが基本マナーです。ただし結婚指輪だけはマナー違反ではないとされているようですが、結婚指輪もさまざまな種類が、中には華美な指輪もあるので一概にOKとはいえないでしょう。マナー違反でなくなった理由はよく分かりませんが、和装本来の姿を考えた場合には、結婚指輪も外したほうが無難だと思います。
洋装の場合
洋装の正装はアクセサリーを着けるのがマナーです。ただし、華美な飾りとしないため次のようなアクセサリーコードが存在します。このコードは、正装におけるアクセサリーの意義のうち「相手を敬う」を実現させるためだけのものであり、「自分を飾る」目的は完全に除かれているとお考えください。
① アイテムの基本はネックレスのみ
ピアスやイヤリングも華美ではなければOKという説もありますが、葬儀のアクセサリーは自分を飾るものではないのですから、着けないほうが無難でしょう。
② 素材はパール(色は白か黒かグレー、輝きが大きなものはNG)、またはモーニング・ジュエリー(喪中に身に着けるアクセサリー)といわれるオニキス、黒曜石、ジェットのみ
③ 形は一連のみ(二連以上は「重なる」をイメージするためNG)。長さは鎖骨ラインにかかる40cm前後がベスト。
洋装の正装はアクセサリーを着けるのがマナーですが、葬儀のアクセサリーマナーに沿っているか迷うようなら、何も着けないことが無難でしょう。正装のマナーよりも弔いの場であることのプライオリティが高いからです。