新型コロナウイルスの感染拡大は、社会のあらゆるところに影響を及ぼし、これまでの生活(社会)様式が一変する可能性が実に大きくなってきています。その中の1つに「お墓参り (墓参)」も含まれてくるのではないだろうか、と筆者は考えています。そもそも、これまでも「お墓」が遠隔地にあるために「お墓参り」になかなか行けない、という悩みを抱えている人は数多く存在していました。例えば地方から都市部に出てこられた人の家族の「お墓」は故郷にあるために、「お墓参り」には遠距離移動が必須になります。また、お墓が地方にある場合でなくても、霊園は住宅地から離れた場所に設けられていることが多いので、少なくとも『散歩しがてらお墓参り』ができる環境を持つ人は圧倒的に少数だと思います。そんな悩みを解決するために誕生したサービスが、「お墓」の掃除代行や墓参代行サービスであり、オンライン(インターネット)での「お墓参り」を提供するサービスです。現時点では、まだ大きな広がりを見せてはいませんが、今後さらに注目を集めそうな「オンラインお墓参り」について考えてみたいと思います。
現実のお墓の写真を登録してお参り
既に日本でも数年前から、オンラインでのお墓参りサービスを提供する事業者が複数誕生しています。サービス内容を拝見すると、どこも大きく2種類に分かれています。
1つ目は、実際に存在しているお墓に、インターネット経由でお墓参りをする方法です。これは、お墓の写真などを登録してパソコンやスマホにそのお墓を表示させて、画面に向かってお参りをする、というものです。事業者により異なりますが、音声による読経、画面内(オンライン上で)供花や焼香(線香を供える)ことができるサービスもあるようです。
また、中には実際のお墓にカメラを設置してリアルタイムの動画(画像)を表示させる(ライブカメラ)ことができるサービスもあるようです。音声サービスや、ライブカメラはオプションサービスですが、それらを除くと費用は概ね、登録料が3,000円から5,000円、年会費が2,000円から3,000円と比較的リーズナブルですね。
もっとも、これだけではお墓の掃除などが行なえませんので、お墓掃除代行サービスなどを組み合わせることで、遠隔地にあるお墓にお参りすることがなく故人の供養とお墓の維持管理が行える、というものになります。
なお、このサービスは、霊園を設置している寺院が行っているケースをいくつか見つけることができました。
散骨の場合は注意が必要
もう1つが、そもそもお墓を持っていない人のための、バーチャルお墓(バーチャル霊園)です。実際のお墓がないので、バーチャルのお墓(の写真)をオンライン上に設けて、そこにお参りをするというものです。費用は、現実のお墓がある場合と変わりません。
ところで、お墓がない状態とはどのような場合しょうか。1つは、遺骨を入れた骨壷を埋蔵せずに自宅に持ち帰り手元供養する場合です。でも、このケースは供養する対象があるわけですから、わざわざバーチャルお墓を設ける必要性が感じられません。おそらく、最近増えつつあるとされている、「散骨」を選択された人に対してのサービスだと思われます。散骨に関しては、以前も記事にしましたが『法律では認めていないが現在は罰せられることはないという』グレーな行為です。地方自治体では規制しているところがありますので、決してお薦めできる選択肢ではありません。となると、このお墓を持たない人のためのバーチャルお墓も、限りなくグレーなサービスということになりそうです。
これまでの考察から、遠隔地にお墓を持つ人にとっては、オンラインお墓参りは今後1つの生活様式として定着していく可能性があると言えそうです。お墓参りが不要不急だとは決して思いませんが、リアルのお墓に対しても、オンライン上のお墓に対しても、お参りをするときに大切なのは、故人に対する想いです。形がどうあれ、供養する心さえ失っていなければ、それは新しい供養のあり方と言っても良いような気がします。でも、何回かに1回くらいでも良いので、実際にお墓に赴き、掃除代行サービスではなく自らの手でお墓の掃除をすることが可能なら、より理想的だとは思っています。