1月20日の日経新聞に、『「新潟発」香典キャッシュレス、今春導入へ』という記事が掲載されていました。国をあげてキャッシュレス化に邁進している日本は、ついに香典までキャッシュレス化になるのでしょうか。
新潟県が県をあげて開発に取り組む
このプロジェクトは、新潟県で産官学揃って開発を進めてきた「キャッシュレス葬儀」です。システム構築を担うのは新潟県のIT企業であるアイビーシステム(新潟市・若桑茂代表取締役)で、開発を支援するのは新潟県とその外郭団体である「にいがた産業創造機構そして新潟大学です。まさに新潟県の第一線のナレッジが全て投入されたものといえるでしょう。2019年秋から開発が始まり、システムベータ版が完成しこの度実証実験が行われたそうです。
キャッシュレス化された香典のフロー
キャッシュレス化の方法は次の通りとなります。
① 葬儀会社がECサイトで香典や供物などを登録し販売する
② 葬儀前に参列者がECサイトでクレジットカードを使って購入する
③ 葬儀会社から喪主(家)に、参列者のリストとともに、香典分の現金を渡される、または銀行に振り込まれる
④ 当日の参列時には、ECサイトで事前発行した二次元バーコードを受付時にタブレットで読み取り、参列者の情報を登録する。
当面はクレジットカードによる事前決済のみが実装されそうです。
喪主(家)も葬儀会社も大幅な省力化
この一連のデジタル化は、喪主(家)にとっても、葬儀社にとっても大きなメリットがあると考えられています。これまでのように、不祝儀袋から香典を出して金額を確認して参列者の名前とともに記帳する、という行為が不要となります。また、香典返しや供物のお返しのためのリスト作成も大幅に省力化されます。ECサイトの購入時には住所も明記されるので、いままでは時折あった『香典や供物をいただいたけど、住所が分からない』とか中には『香典袋に名前が書かれていない』などという困りごともなくなることになります。
カタチが変わっても想いが届けば
課題は、香典をクレジットカードで購入するというスタイルが、日本の慣習に馴染むかどうかだと思います。参列者にしてみると不祝儀袋を購入する、薄墨文字で書く、などの煩わしさから開放されますが、香典は単にお金を受け渡せばいいものではない気がします。確かに葬儀の受付は喪主(家)ではなく関係者のお手伝いなので、喪主(家)が直接香典を受け取るわけではありません。しかし不祝儀袋を開封するのは、多くの場合は喪主(家)が直接行いますよね。この行為がなくなり、葬儀社からまとめて現金だけが渡される、場合によっては銀行に振り込まれるのでは、とても軽い行為になってしまう気もします。でも、そんなことは些細なことなのかもしれません。大切なのは、故人と喪主たち遺族に対する想いなのであることを考えると、所詮はカタチに過ぎないのだから、時代に合わせてどんどん進化してくべきなのかもしれませんね。