パスポートの申請や生命保険金を請求するとき、年金の受給開始時などに必要な戸籍謄本。相続の手続きを始めるときにも必要です。本籍地を移していない人は、その都度本籍地の自治体に出向いて謄本を入手するか、自治体から郵送してもらう手続きが必要でした。これって結構面倒なんですよね。それが少し先ですが、2025年から現在お住まいの自治体でも入手できるようになるのです。
戸籍法が改正されました
これまで戸籍は各市町村が単独で管理運用を行っていました。昔のような紙による管理ではなく全国1896市町村のうち1893市町村がコンピューターシステムによる運用を行っているのですが、残念ながら各市町村のシステムがネットワーク化されていないため、本籍地自治体に申請する以外に方法がなかったのです。一方で2013年の東日本大震災を契機に、法務省に全戸籍の副本を管理するシステムが導入されています。この副本データ管理システムを運用すれば全国のどこからでも戸籍謄本の取得が可能となるというわけです。2019年5月24日に参院本会議で改正戸籍法が可決成立し、法務省の副本データの活用が正式に認められました。全国自治体と法務省のシステムをネットワーク化するために5年という期間が必要になるのですが、完成後は本籍地以外では、運転免許証やマイナンバーで本人確認をして戸籍謄本を取得できるようになります。また、戸籍データをマイナンバーとも連携させることで、年金受給などの受給手続きで戸籍謄本添付を省略できるようになるようです。なおこの変更に伴い、名称も「戸籍謄本(抄本)」から「戸籍関係情報」に変更されるようです。
相続関係が一番厄介だった
自分自身の戸籍謄本であれば、本籍を現住所に移しさえすれば不便は感じないかもしれませんが、相続手続きの場合には被相続人(故人)の出生から死亡するまでの「連続した戸籍謄本」が必要となります。連続したというのは、例えば結婚により本籍が移った場合に、結婚前の戸籍と結婚後の戸籍は別物なので、住んでいた自治体が異なればそれぞれから入手しなければなりません。また、住所移転とともに本籍も動かしていれば、同様にそれぞれの自治体に戸籍が残っています。本籍を移すと前の戸籍情報も一緒に移るわけではないんですね。ここが重要なところですので、しっかりと覚えておいてください。
・ 戸籍を動かした場合、動かす前の戸籍情報は動かす前の自治体に存在する。
被相続人が何度も戸籍を動かしていれば、その自治体全てを回って(あるいは郵送手続きをして)途切れることのない戸籍情報を収集しなければいけないのです。あまりに面倒なので、連続した戸籍謄本の収集は司法書士などに一任するケースが多かったようです。今回の改正でワンストップで戸籍情報が入手できるようになると、司法書士の仕事が少し減ってしまうかもしれないですね。