今回ご案内する神社は、伊勢山皇大神宮(いせやまこうだいじんぐう)です。日ノ出町駅、桜木町駅のどちらからも徒歩で10分程度と、アクセスの便が良く、近くには横浜市立野毛山動物園もあるので、休日には家族連れで訪れてみるのも良いかもしれませんね。
伊勢山皇大神宮が創建されたのは1870(明治3)年にさかのぼります。横浜港が開港し、横浜は貿易の街として急速に発展し始めました。多数の外国人が訪れるようになり、特にキリスト教をはじめとする異文化が一気に流入し始めたのです。そこで神奈川県は横浜の人心と社会をまとめる精神的な象徴が必要不可欠と考え、伊勢山皇大神宮を横浜の総鎮守という位置づけにしたのです。
神奈川県が創建したので、旧社格では県社となるのですが、創建当時に伊勢神宮の遥拝所とすることを願い出て許されており、官国幣社(伊勢神宮に次ぐ格式の神社)に準ずる社格を与えられています。また、主祭神も伊勢神宮と同じく天照皇大神を祀っている正式な神宮であるとして、当時の勅許により皇大神宮(伊勢神宮の内宮)の名称(号)を使うことを許された、と考えられています。天照皇大神を祀っている神社には、皇大神宮あるいは大神宮と号している例が多いのですが、伊勢山皇大神宮はそれらの中でも別格だったということなんでしょうね。このような歴史的な経緯もあって、伊勢山皇大神宮は「関東のお伊勢さま」として広く親しまれています。
なお、伊勢山皇大神宮の社殿(本殿)は、2018年に創建150周年の記念事業の一環として伊勢神宮の内殿まるごと一式を下げ渡され、移築したものです。伊勢神宮は20年に一度の式年遷宮があり、その都度旧宮は解体され、その部材は全国の希望する神社に下げ渡しています。しかし、まるごと一式の下げ渡しは過去においても名古屋の熱田神宮のみで、実に稀有な例となります。つまり、現在の社殿は、2年前までは伊勢神宮そのものだったというわけなんですね。こんなことも知っていると、お参りするときにも気持ちが引き締まりますね。