家族の葬儀を済ませた後に待っているものの一つが、(市区町村の)役所に出向いて行うさまざまな行政手続きです。自治体によって若干の違いがあるようですが、概ね50から60種類近い書類を書く必要があり、担当する課の数も10を超えるのがほとんどです。日によっては、役所の窓口がメチャ混んでいて、かなりの待ち時間が必要なことも。それを10カ所も回らなくてはいけないのですから、ちょっと気が遠くなりそうですね。
遺族が行わなくていないけない手続きの例
死亡届とは別にざっとあげてみただけで、次の手続きをそれぞれの担当課(名称は一般的なものです)で行う必要があります。
○世帯主の変更 → 戸籍課
○介護保険証の返納 → 介護保険課
○国民健康保険の葬祭費請求 → 国民健康保険課
○地方税の相続人代表者の届け出 → 税務課
○地方税の還付金申請手続き → 税務課
○遺族基礎年金の請求 → 国民年金課
○死亡一時金の請求 → 国民年金課
○障害者手帳の返納 → 障がい福祉課
○福祉手当の資格喪失手続き → 障がい福祉課
○農地の相続 → 農業委員会
○山林等の相続 → 河川課
これ以外にも、国や県に対して行う必要がある手続きもあります。
遺族の負担を軽くする一括行政サービスが登場
これはすべての遺族に共通する悩みです。そんな住民の悩みを解決するため、2016年5月に全国で先駆けて、一括して手続きすることが可能な「おくやみコーナー」を設置したのが大分県の別府市です。きっかけは若手職員によるプロジェクト。手続きにきた人が、途方に暮れている姿を目にしたり、実際に途中で帰ってしまう人がいることから、何とか改善できないかと知恵を絞った成果でした。別府市によると、全てのワンストップ化は困難だったため、特に煩雑な手続きに絞ったそうです。おくやみコーナーでは死亡届をもとに各課に提出すべき届出書を一括して作成の補助をしてくれます。その後、遺族を各課に案内するか、担当職員がコーナーまで出向いて手続きを完了してくれるそうです。コーナー開設後は、待ち時間が3分の1に減ったそうです。大分県は、終活支援に取り組んでいる杵築市といい、先進的な取り組みをする自治体が多いですね。
全国に広がってほしい
別府市の取り組みは、他の自治体が注目するところとなり、すでに80を超える自治体から視察に訪れたり、問い合わせを受けたりしているそうです。筆者が調べたところでは、兵庫県三田市、三重県松阪市、神奈川県大和市で、同様の取り組みを2018年度から始めています。縦割りだった役所が、住民ニーズに応える形で変わっていくのは実に素晴らしいですね。ワンストップで手続きできる部門をつくることは、かなりハードルが高いので、いわゆるコンシュルジュ的な役割で手続きのサポートをするのがポイントです。これなら多額の予算も必要ないですし、決して難しいことではない。これから全国の自治体に広がっていくことを期待したいです。