コインロッカーから遺骨が入った骨壷が見つかる、電車の棚に放置された骨壷。そんな記事を目にすることがあります。おそらく事情があってのことだとは思いますが、遺骨を遺棄するのは、道義に反するだけでなく、法律に反する行為なのです。
遺棄する人々の事情
遺骨を遺棄する人の最大の理由は、お墓がないからです。日本のお墓は、世界的にみても稀といってもいい、「◯◯家の墓」という一つのお墓に家族の遺骨が複数入るスタイルです。筆頭相続人は、財産だけでなくお墓も含めた祭祀も一緒に相続しますので、自分も含めて家族はそのお墓に入ることができます。でも筆頭相続人以外で、新たな家庭をつくった人は別のお墓を造る必要がでてきます。お墓を造るには高額な費用がかかります。墓所に納める墓地の永代使用料と墓石を買い建立する費用の全国平均は200万円にもなります。日本国民の経済状況が2極化しつつあるといわれている現代は、お墓がないからやむを得ずという人が出てきてもおかしくないのかもしれません。
普段付き合いのない親族の遺骨が委ねられる
一人暮らしの高齢者が増えています。配偶者と離別したり死別したりして、子どももいない。また、これからは生涯未婚の人も増えていきます。そんな高齢者が亡くると、葬儀を行い埋葬する人がいないことになるので、その場合には市町村が埋葬しなければならないと法律で定めています。無縁遺骨が増えているので行財政への負担も大きくなっています。そこで、市町村はできる限り身寄りを探すように努めます。ある日突然「あなたのおじさんが亡くなったから遺骨を引き取りに来てください」と連絡が入ったりするのです。長いこと疎遠だったのに、親族だからという理由で遺骨を押し付けられても迷惑だと考える人もいるだろうな、と思います。自分が入るお墓もないのに、というケースだけでなく、例えお墓があっても、実質的には他人に等しい人を自分が用意したお墓に入れたくない、と思う人の気持ちが理解できないわけではありません。
刑法で定められています
しかし、どのような事情があっても、遺骨を遺棄することは法律違反です。刑法の190条に「死体損壊等」についての条文があります。『死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する』というものです。つまり遺骨の遺棄は、明確な犯罪になるわけです。もちろん、遺棄したことが明らかになって、罪に問われることになっても、事情を勘案してくれて実刑にはならない可能性は高いと思います。でも違法行為である以上は、そのような行為を選択しないことが賢明だと思います。
少ない費用で
でも現実にお墓を造ることは難しいでしょう。そのような場合は、どうすれば良いのでしょうか。方法の一つとしてあげられるのが、合葬墓の利用です。合葬墓とは、複数の遺骨が埋葬される共同墓のことで、近年は都市部だけでなく墓地の用地が不足し始めているため全国に広がりをみせています。合葬墓であれば予算10万円程度のものからありますので、お墓を造るより安価です。また、「送骨」と称する、遺骨をゆうパックで送れば永代合葬墓に埋葬してくれるサービスを展開しているお寺や霊園も各地にあるようです。インターネットで「遺骨」×「ゆうパック」で検索してみてください。遺骨を送ることは、決して勧められる行為だとは思いませんが、遺棄するより遥かにましです。遺骨を捨てる、手放す前に、別の方法がないのか考えてください。
墓所に埋葬しないで自宅に遺骨を置いて供養する手元供養という方法があります。この方法ならお墓にかかる費用は必要ありません。疎遠な親戚の遺骨を手元で供養したいと考える人は多くないと思いますが、単純にお墓の費用だけが問題の人には、手元供養も現実的な方法だといえそうですね。
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