仏壇離れが現在進行形で進んでいます。以前記事にした㈱メモリアルアート大野屋さんの調査では、自宅に仏壇があると回答したのは70代でさえ62%で、60代は5割を切り、当然その下の世代はさらに低くなっています。「毎日仏壇に手を合せて先祖や亡くなった家族を弔い、敬い、感謝も気持ちを捧げることが、日本人としてあるべき姿だ」的な教えはもう時代遅れなんでしょうね。そもそも、現代では新築される住宅に、集合住宅は勿論一戸建てでも仏壇を置くスペースが無いことのほうが当たり前です。日頃仏壇に接することがなければ拝礼の作法を知らない人も多いでしょう。今回はそんな仏壇にまつわる話です。
仏壇で供養する対象
仏壇には先祖や亡くなった家族の位牌が置かれています。そのために仏壇とは先祖や故人を祀るものだと考えている人も多いでしょう。筆者も実際に拝礼するときに頭に思い浮かべるのは、亡くなった家族のことですから。しかし本来は、文字通り仏壇は仏様を祀る場所、家庭に置かれた仏教の礼拝施設でした。菩提寺のご本尊を模した仏像を祀ることで、日々の拝礼を菩提寺まで出向かずに自宅でも行うことができるという意図がありました。しかし、明治以降に仏教は信仰の対象ではなくなり、葬式仏教となりました。その過程から現代にいたる中で、いつしか菩提寺のご本尊に拝礼するのではなく、先祖や家族を拝むだけの場所になったのでしょう。おそらく菩提寺のご本尊を模した仏像が置かれている仏壇は、ごく稀だと思います。
仏壇に拝礼するときの作法
仏壇には毎日の朝と夕に給仕(ご飯、水、花の取り替え)を行います。給仕を行った後に家族が順番に拝礼をします。また、仏壇があるお宅を訪問したときは、訪れた直後と帰る直前に仏壇に拝礼します。拝礼の仕方は次のとおりです。
① 仏壇の前に正座をする。(数珠があれば手にかけ)軽く一礼する
② ローソクに火を付け、その火を線香に灯して香炉に立てる。鈴(リン)を2回鳴らす
③ 合掌しながらお経を唱える、または故人への弔いの言葉・祈りの言葉などを唱える(声に出す、出さない、どちらでも良い)
④ 唱え終えたら鈴(リン)を2回鳴らし、合唱して深く拝礼する
⑤ ローソクに火を手であおいで消し、軽く一礼する
仏壇はどこに面して置くのか
新しく仏壇を購入する人、仏壇を伴う引越しをする人、おそらく少ないとは思います。しかし最後に、新しい住まいに仏壇を置くことになったときの置く方角に関する豆知識をお伝えしましょう。仏壇の置き方には3通りの説が存在しています。
① 拝礼者が西方浄土を向く
つまり拝礼者に西向きになるように配置します。仏壇が面するのは東となります。
② 拝礼者が北を向く
仏壇は南に面することになります。武家の慣習からという説です。
③ 拝礼者は本山に向く
菩提寺の本山に向けて拝礼できる位置に置きます。方角は問いません。ただしこの方法だと、本山の位置が家の真南にある場合には仏壇は北に面することになります。北向きは避けるのが一般的になので、そんなときは①か②のいずれか、になるのだと思います。