中国武漢で発生した新型コロナウイルスは、全世界に蔓延して数多くの犠牲者が出ています。日本でも4月8日ついに安倍首相が「緊急事態宣言」を発するに至ってしまいました。東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象となり、各都府県は「密閉」「密集」「密接」の3密を防ぐために、法律を根拠とした住民に対する要望を出せるようになりました。宣言以前も不要不急の外出を控える要請は出されていましたので、国が宣言によって何かが大きく変わるという訳ではないのですが、事態の重要性、緊急性を日本国民1人ひとりが強く認識することには繋がったのではないかと思います。宣言の対象となる都府県を中心に全国規模で、イベントなど大人数が集まる場の自粛や事業の休業などの要請が出されています。葬儀や法要も多くの人が集まる場です。こんな状況下では、葬儀や法要はどのように営めばよいのでしょうか。
葬儀や法要に延期・中止という選択肢はない
まず始めに葬儀や法要に自粛が求められているのか、についてです。国も各自治体も、葬儀や法要を名指しして自粛の要請はしていません。自粛が求められている大人数が集まる場には該当するのでしょうが、人の死は時と場合を選んでくれるものではありません。そしてその死を悼むことは人としての権利であり義務でもあると考えています。葬儀や法要と同様に感染を広げる可能性が高いという3密に該当する大人数が集まる場としては、結婚式の披露宴をあげることができます。ニュースで結婚式の披露宴を延期することにしたカップルを何組も紹介しています。人生の大切な門出にコロナウイルス感染という汚点を残したくないから、断腸の思いで延期を決断されたのだろうと思います。一方で葬儀や法要は披露宴とは異なり延期という選択肢はないに等しいです。まして中止ということも考えられません。
斎場や葬儀社は感染防止を徹底している
公営の斎場や民間の葬儀社のホームページを見ると、延期や中止という選択肢がない以上、どの斎場も葬儀社も通常営業を行っています。ただし、感染防止のために館内の除菌を頻繁に行い、スタッフは必ずマスクを着用し、各所には消毒液を配置し参列者がいつでも除菌できるようにし、式場や控室は通常より頻繁に空気の入れ替えを行うなど、徹底した感染予防対策を施しているようです。しかし、参列者の中に1人でも感染者がいた場合は手の施しようがありません。
葬儀会場がクラスターになる危険性
近年は、家族葬、直葬などの小さな葬儀が増えていますが、3月以降はより小さな葬儀が増えているのだそうです。最小限の参列者のみで葬儀を行い、一般会葬者がいる場合は、焼香のみをお願いするといったように。故人を見送る、たった一度だけ、やり直しのきかない葬儀なので、多くの故人と縁ある人に会葬してほしい、とは誰もが考えることでしょう。しかし、愛媛県が発表3月31日の事例をみると葬儀会場にはクラスターとなる危険性が潜んでいることが分かります。これは栃木県から愛媛県の葬儀に参列した人が感染しており、通夜、葬儀、会食の場を介して複数人にウィルスを感染させたという事例です。人に感染させない、自分が感染しないためには、葬儀は最小限の規模で営まざるを得ないと思います。愛媛の事例の場合では、遠隔地からの移動中にももしかしたら感染させているかもしれません。どれほど縁が深くても遠方の人を参列者として招くことは厳に謹んでほしいことだと思います。
後日お別れの場を設けてはいかがでしょう
葬儀社の中には「後日葬」「後葬」といって、後日お別れの場を設けることを提案するところもあるようです。著名人が亡くなったときに、葬儀は近親者のみで営み、日を改めて多くの人が参列できる「お別れの会」を設けるというスタイルですね。これであれば、結婚式の披露宴だけを延期することができるのと同様に延期できることになります。手間も費用も余計にかかってしまいますが、故人とのお別れの場を大切に考えた場合には、最良の方法だと言えそうです。
最後に法要についてです。法要は日が限られるために、「お別れの会」にあたる会を改めて設けるということは難しいと思います。四十九日や一周忌、三回忌の法要であれば、できれば多くの縁ある人に、故人を弔ってほしいところではありますが、ここは感染させない、感染しないことを最優先に考えて、最小限のものとされることをお勧めします。