葬儀や法要のときに、祭壇の周りを飾る花が供花(きょうか)です。「くげ」とも言われますが、仏堂などの仏前に供える花のことを「供華(くげ)」と言うので、「きょうか」と「くげ」は呼称を変えて区別するものである、という説もあるようです。その目的は故人を弔うことと、遺族を慰めることの2つがあります。近年は、祭壇そのものが生花で覆われている生花祭壇も登場し、たくさんの美しい花で、故人を見送るという場面も増えています。
宗教・宗派による供花の特徴
宗教や宗派によって供花には慣習らしきものがある場合があります。「らしきもの」と敢えて書いたのは理由があります。供物の歴史は古く、宗教儀礼における信仰対象に捧げるものとして明確な宗教的な慣習が存在しています。しかし、葬儀や法要において供花が一般的な存在となったのは明治以降です。一部の宗派では教義に則った慣習も存在しますが、それ以外はルーツも理由もはっきりとしていません。どちらかというと、以前書いた『お葬式には白い菊が多いのはなぜ?』にあるように、生産と流通の都合が理由で慣習化してきた可能性もあります。ですので、必ずしも守らなければいけないマナーではないと考えています。大切なことは、故人を弔う、遺族を慰める目的をしっかり果たしているか、ということでしょう。とはいえ、一応簡単に慣習としてではなく一般的なものは何か、という観点でお伝えしておきます。
仏式・神式の場合
仏式・神式は和花である、菊、欄、百合の白い生花が多いです。日本で古来より江戸時代まで供養花として使われていた「樒(シキミ)」を供えることは激減していますが、日蓮宗系だけはいまだに、「樒(シキミ)」を供えることが多いようです。葬儀が執り行われるのは、セレモニーホールなどの葬儀場が多いので、そのような場合は祭壇の両脇を葬儀社のスタッフが供花で飾ります。以前は祭壇の左右に置くため1対(2基)が一般的でしたが、最近では1基のみの場合も増えています。葬儀社が入ることがほとんどなので、供花の手配(依頼・注文)は、葬儀社に対して行うのが無難です。
キリスト教式の場合
ユリやカーネーションなどの洋花が選ばれることが多いです。葬儀会場は教会となることが多いため、遺族が自ら教会に供花を運び入れて祭壇の周りを飾ります。葬儀社が入らないことも多いので、供花の手配を生花店に行いましょう。
葬儀で供花を送る(贈る)タイミング
供花は、お通夜の日の午前中までに、お葬式の前日までに供えられている必要があります。そのため、通夜や葬儀の当日ではなく前日に届けられるよう注文しましょう。『早く着きすぎると、すでに準備していたと思われ、悪い印象を与えかねない』ということを言う人がいます。これもつくられた慣習のような気がしますが、生花であることを考えるとできる限り鮮度が高いほうが良いですよね。ギリギリに送るのが吉なのは間違いないことでしょう。葬儀社や生花店であれば、最適の日に手配してくれることでしょう。供花の相場は、5,000円~20,000円といわれていますが、葬儀社や生花店に相談すれば良いでしょう。
これだけは気をつけたいこと
供花を供えたいと考えたときに、故人や遺族のことを考えて次のことだけは気をつけるようにしましょう。
① 遺族の了解を得る。
最近は、香典や供物を辞退される通夜、葬儀、法要が増えています。そのため、遺族の意向だけは手配する前に必ず確認しましょう。会葬案内などに『ご厚志(意)辞退申し上げます』とあれば、香典、供花、供物など一切を辞退するという意味です。『供花・供物辞退申し上げます』とあれば、供花と供物を辞退しているということです。
② 葬儀社を通して依頼しましょう
葬儀や通夜に葬儀社が入っているとしても、その葬儀社を介さずに自分で生花店に手配することは無論可能です。しかし、冒頭でも書いたように最近では生花祭壇も増えてきています。祭壇全体の統一感を失わせるような供花になってしまっては、故人も遺族も喜ばないでしょう。
いまは故人が好きだった花で祭壇を飾ることが主流になりつつあるようです。生花以外のアレンジメントフラワーを供えるケースも増えています。先に書いたように、少なくとも宗教的な慣習ではないので、必ずしも一般的なものに縛られる必要は全くないのかもしれませんね。