高齢化社会に突入した日本では、葬儀業界に注目が集まっています。
これまでにも異業種から葬儀業界に参入した企業や、ネット検索の上位表示の技術を駆使して、全国規模で低価格の葬儀を受け付ける企業が話題になりました。
そういった葬儀業界の中で互助会は多くの会員を抱えていることで「安定した業績」を上げています。
互助会組織は日本全国に250ほどあり、会員数は「2240万人」、預かっている積立金の総額は「2兆5000億円」にも達しています。
日本国内で執り行われる「葬儀の20%弱は互助会によって運営」されています。
互助会の葬儀は、加入する際にプランを選択し、月々数千円という低額の積み立てを5年~10年続けることで費用をまかないます。
一般の葬儀と比較して、互助会の葬儀プランにバリエーションが少ないと思われるかもしれません。
互助会で葬儀を行うことのメリットは、「割安の会員価格で葬儀を行うことができる」ことです。
また互助会で保有する葬儀ホールが会員には割引価格で優先的に利用できるということがあります
逆に、互助会の葬儀のデメリットとしては、「利用できるプランが限定されている」ことや、「積立金は葬儀の目的以外には使えなくなり固定化される」ということ、また積立をしているうちに、別のところで葬儀を依頼したいと思った場合には「解約に手数料がかかる」ということです。
葬儀費用の面で見ていくと、互助会の積立金が満期になったとしてもそれだけでは葬儀にかかる費用の全額はまかなえないということを知っておいたほうがいいでしょう。
互助会のプランに含まれているのは、基本的な式の運営費や装具類にかかる分で、それ以外については別途費用がかかります。
目次
互助会の葬儀プラン
互助会に加入すると、互助会が用意しているプランを使って葬儀を行うことになります。
「互助会の葬儀にはどのような特徴」があるでしょうか。
一般の葬儀と比較してみていくことにしましょう。
互助会の葬儀プランの特徴
互助会に加入すると用意されている葬儀プランから選択することになりますが葬儀の種類としては少ないです。
全国規模で運営されている代表的な互助会のベルコでは、基本的に「2つのプラン」から選ぶことになります。
月2000円を10年間120回分積立てて24万円になる「BCコース」と月4000円を同様に10年間積み立てて48万円になる「BDコース」です。
プランの中に「祭壇、棺、遺影、霊柩車」と葬儀を行う「式場の設営」や「式の進行」といったサービスが含まれています。
祭壇は一般的な白木祭壇の他に、「花祭壇」、「オリジナル祭壇」、「家族葬祭壇」を選ぶことができます。
互助会の葬儀と一般の葬儀の違い
互助会の葬儀は、数種類のプランからの選択になるため、人によっては自分が希望する葬儀のスタイルと合わない可能性があります。
互助会によっては、希望に近いものを用意してもらえる可能性もありますがどうしても選択肢は限られているといえます。
葬儀そのものは、一般的な葬儀社に依頼した場合と大きな違いはありませんが、互助会によっては、自前の葬儀ホールの利用料や飲食、香典返しなどは会員特典としてグループ会社から安く提供されることがあります。
互助会で葬儀をするメリット・デメリット
互助会で葬儀を執り行うことには、どのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。
メリット
互助会に加入すると毎月数千円という低額の積み立てを続けることで万が一に備えることができます。
いざというときにどこに相談すればいいのか心配という方にとっては大きな安心につながるでしょう。
葬儀にかかる費用も割安に抑えることができることや、会員特典としてオプションサービスを格安で提供してもらえたり、互助会と提携しているお店の商品を安く購入できたります。
デメリット
互助会の会員になると、葬儀のスタイルは互助会が提供しているプランの中から選択しなければいけません。
プランの種類は限られているため、自分が望むような葬儀の形態がそのプランの中にない可能性もあります。
また、積立金は自由に引き出すことはできず、葬儀以外に使えなくなります。
もし解約する場合には、「10%~15%の手数料がかかる」ので注意が必要です。
互助会の葬儀の費用
互助会が提供している葬儀プランには「何が含まれていて」、「何が含まれていない」のでしょうか。
また費用はどのぐらいなのでしょうか。
一般の葬儀の場合とも比較してみてみましょう。
プランに含まれる内容と費用
互助会のプランに含まれている内容は、下記のとおりです。
価格は互助会によって違いがありますが、代表的な互助会であるベルコの場合は、24万円の「BCプラン」と48万円の「BDプラン」のどちらかから選びます。
それぞれ含まれるものの内容はほぼ同じでグレードが異なります。
- 祭壇
- 棺
- 遺影
- 霊柩車
- 葬儀を行う式場の設営費用
- 式の進行費用
基本的なものはプラン内に含まれていますが、ここにないものはオプションとして別途契約する必要があります。
プランに含まれない内容と費用
下記の費用は葬儀プランに含まれておらず、別途費用が必要になります。
- 式場会場費
- 飲食接待費
- 火葬費
- 返礼品費
- 宗教者関係費
積立金ですべて賄えると勘違いしていてトラブルになるケースがあります。
どこまでがカバーされているのかは、しっかり確認しておく必要があります。
火葬費や宗教者関係費以外は、会員特典として互助会の関連会社から割安で提供してもらうケースもあります。
一般の葬儀費用
一般的な葬儀にはどのぐらいの費用がかかるのでしょうか。
2020年に行われた調査によると、葬儀費用の平均相場は「約208万円」でした。
(内訳)
- 葬式費用 119万円(火葬場使用料、葬儀会場費、人件費等)
- 飲食接待費 31万円(通夜振る舞い、精進落とし等)
- 返礼品費 34万円(返礼品、香典返し等)
- 宗教者関係費用 24万円(読経料、戒名料等)
互助会の葬儀費用はオプションを入れると高いという話もありますがどうでしょうか。
火葬費、宗教者関係費は実費ですので、互助会でも一般の葬儀会社もだいたい同じです。
それ以外の費用は互助会の保有施設を利用したり、関連会社からのサービスを受けると割引になることを考えると、トータルではあまり変わらないように思われます。
互助会の組織とは
互助会とはどのような組織なのでしょうか。
その「歴史」や「仕組み」、代表的な互助会もあわせて理解しておくといいでしょう。
互助会の仕組みや組織については、こちらの記事も参考になると思います。
ぜひご覧ください。
「【互助会とは?】互助会の仕組みや選び方、加入方法について解説」
⇒ ご参照ください。
互助会の歴史
現在、多くの会員を抱えている互助会は、それぞれ独立した組織として運営されています。
その歴史が始まったのは1948年、まだ戦後のゴタゴタが残っている時期このことです。
物資が揃わない中でも、身内の冠婚葬祭はきちんとやってあげたい声が多くありました。
そこで、少額のお金を大勢の仲間で出し合い、設備を整え会員になった人には格安で利用できる仕組みを創設しました。
日本の復興に合わせて互助会は多くの支持を集め、全国各地で広まっていきました。
1960年代~1970年代にかけて、若い人たちが都市部に集中するようになったことで結婚需要が高まり、互助会でも結婚式のために積み立てをする会員を増やしていきました。
時代が進み、少子高齢化が明らかになると、互助会の主たる事業も葬儀にシフトしていきました。
互助会の仕組み
互助会の仕組みは、相互扶助の精神に基づいて多くの会員がお金を出し合い、そのお金を会員が「冠婚葬祭を執り行う際に活用する」ということです。
月々の会費は数千円で、積立期間は5年~10年間と長期に渡ります。
互助会はこの積立金を式場建設や設備の整備に使ってきます。
会員は特典としてこうして建てられた式場を格安の料金で優先的に利用できるようになっています。
また互助会では冠婚葬祭に関連する会社を運営していることが多く、「衣装」や「食事」、「返礼品」などを割安で会員価格で利用できるようになっていることがあります。
全国的な互助会組織
日本全国には250程の互助会の組織がありますが、それぞれ独自に運営されています。
会員数は「2240万人」、積立金の合計は「2兆5000億円」にもなり、日本全国で行われた葬儀の2割弱が「互助会」によるものとも言われています。
互助会はそれぞれが個別に運営していることで、かつては統一のルールがないまま各地で乱立し、さまざまなトラブルが発生した頃がありました。
経営がずさんで破綻してしまい、積立金が戻らない事態も発生していました。
こうした状態のままではいけないということで、業界団体の立ち上げが進み、互助会運営の統一ルールも設けることになっていきました。
現在、「一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協」には、現在208社が加入し、経済産業省の管轄の下で互助会の運営体制が整備されることになりました。
万が一経営破綻が生じた場合にも、積立金の半分は保全されるようルールが作られています。
代表的な互助会
日本国内には250の互助会組織がそれぞれ独自に運営されています。
その中で全国規模に成長し大きな組織となったものもあります。
ここでは、いくつかそうした「互助会」をご紹介します。
<ベルコ>
互助会として日本最大級の規模を誇るベルコは加入者数「263万口」で、年間4万件以上の葬儀を執り行っています。
創設は昭和44年(1969年)兵庫県からスタートし、現在では18道府県に広まっています。
多くの関連企業を運営し、会員向けの特典として割引サービスを提供しています。
<メモワール>
会員数「約33万人」を保有するメモワールは、神奈川・東京・静岡・山梨を拠点に事業展開しています。
昭和45年(1970年)に創設され、規模を拡大してきました。
<メモリードグループ>
メモリードグループは全体で3200名の従業員が働いている大組織で昭和44年(1969年)に長崎県で創立しました。
長崎・佐賀・福岡・宮崎の他に群馬・埼玉・東京に拠点を構え運営されています。
互助会で葬儀を行うのに注意すべきこと
互助会で葬儀を依頼することを検討している人が知っておくべき注意点にはどのようなことがあるでしょうか。
互助会の積立金で全ての費用はまかなえない
互助会の積立は5年~10年で総額は「30万~50万程」になりますが、この金額で葬儀にかかる費用の全額をまかなえるわけではないということです。
互助会のプランでは基本的なサービスや装具が含まれていますが「式場利用料」、「飲食代」、「返礼品代」、「宗教者への謝礼」、「火葬代」は別途費用になりますので注意が必要です。
解約には手数料がかかる
互助会の積立が満期になる前でもなった後でも解約するには手数料がかかります。
かつては25%以上という法外な手数料をとっていた互助会があり、問題となっていましたが経済産業省の管轄となって統一のルールが設けられたことで「10%~15%」となっています。
経営破綻の可能性がある
互助会を運営しているのは公共団体ではなく企業ですので、運営に問題があれば経営破綻の可能性はあります。
一時期、互助会が乱立し、ずさんな経営をしていた互助会が破綻したケースがありました。
現在では、互助会が経営破綻した場合であっても会員の積立金が保全されるような仕組みとなっており、「半額は返金」されます。
互助会の選び方
互助会での葬儀を考えている場合には、どのように選べばいいでしょうか。
互助会を選ぶ際のチェックポイントをみていきましょう。
情報収集
互助会加入を考えるようになったら、まずは情報を収集しましょう。
どの互助会も「ウェブサイト」で情報発信しているので、そこで基本的なことはわかるでしょう。
興味がある互助会には資料請求して、詳しい資料を送ってもらいます。
自宅近くの互助会
実際に葬儀を執り行うことになると、打合せを何度か行うことになります。
できれば自宅近くにある互助会のほうが相談しやすいですし、式場も近場にあるほうが何かと便利です。
まずは自宅近くにある互助会を探すことをおすすめします。
経営状態をチェック
互助会が経営破綻しても積立金の保全する仕組みがあるのですが、それでも半額しか返金されません。
もし可能であれば互助会の経営状態も確認しておいたほうがいいでしょう。
「クチコミ」や「評判」も情報を集めて実態がどうなのかも調べておくと安心できます。
【互助会の葬儀の特徴とは?】メリット・デメリットや費用の違いを解説 まとめ
互助会の葬儀のことをご紹介してきましたが、互助会ならではの特徴があるので、「十分に理解してから加入する」ようにしましょう。
互助会の積立は「5年~10年」という長期間続きますし、途中で解約すると手数料がかかります。
互助会で葬儀をするまでは積立金は固定化することになるので本当に納得するまで自分で調べることです。
加入の際には担当者の説明を聞いて不明点はしっかりと質問して理解してから手続きをすることをおすすめします。