自分や家族の死に対する考え方や葬儀、お墓に対する思いが多様化してきており、近年ではこれまでの一般的なお墓以外の様々な埋葬方法を利用する人が増えてきています。
中でも人気が高いのが「樹木葬」です。
樹木葬は、1999年岩手県一関市にある祥雲寺というお寺(現在は知勝院)で初めて実施され大きな話題となり、その後全国の霊園や寺院に広まっています。
死後は自然に還りたいと考える人が増えたことや、子どもたちに墓守の負担をかけたくないという考えが人気の理由ですが、費用が一般のお墓よりも安いことも多くの支持を集めています。
樹木葬の費用相場は、他の人と一緒に埋葬する合祀タイプで「8万円~20万円」、他の人と一緒の埋葬でありながら区分されている共同埋葬タイプが「15万円~60万円」、個別に埋葬する個別埋葬タイプが「30万円~80万円」程度です。
樹木葬には、費用があまりからからにことのほかに、お墓のような維持管理をする必要がなく、宗教宗派を問わないというメリットもあります。
注意すべき点としては、家族や親せきからの理解を得る必要があることや、遺骨が返還されない場合があることなどです。
この記事に樹木葬と費用のことを詳しくまとめてありますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
こちらのページにも樹木葬についてまとめてあります。
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樹木葬については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
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目次
樹木葬とは
樹木葬について、明確な規定はありませんが、施設の種類として「庭園型」「公園型」「里山型」の3つに分類されます。
庭園型
都市部にある寺院や霊園などの一角をきれいな庭園のように仕上げて埋葬するスタイルです。
シンボルとなる木(シンボルツリー)のまわりに草花を植栽して、その下に埋葬します。
公園型
近年造成された墓地は、かつてのイメージを覆すように、芝生や草花を植えて公園のような雰囲気で作られています。
樹木の美しさを演出し、一見すると墓地とは思えないような趣になっています。
里山型
人がデザインしたような形ではなく、なるべく自然に近い中に埋葬するスタイルの施設です。
郊外にある里山に区画を設けて埋葬し、そのあたりに樹木を植えて自然に還っていくイメージです。
樹木葬の埋葬方法
樹木葬の埋葬方法には「合祀タイプ」「個別タイプ」「共同埋葬タイプ」の3種類があります。
合祀タイプ
合祀タイプは、故人の遺骨を他の方の遺骨と一緒に埋葬します。
費用があまりかからないというメリットがありますが、後から一般のお墓に移したいといった場合に取り出すことはできません。
また、他の人の遺骨と混ざった状態で埋葬されることが、心理的に受け入れにくいと思う方もいるかもしれません。
個別タイプ
個別タイプは、一人分あるいは家族分の専用の区画に納骨します。
遺骨は、骨壺や布袋など施設が指定する方法で納められます。
費用はやや割高ですが、一般のお墓を購入するよりは安い場合が多いです。
納骨後、一定の期間が経過したお骨は、合祀エリアに移されて供養されるのが一般的です。
共同埋葬タイプ
共同埋葬タイプは、シンボルツリーの下が区分されて埋葬されるため、他の人のお骨とは混ざらないようになっています。
合祀タイプと個別タイプの中間的な料金となっています。
お墓との違い
一般的なお墓と樹木葬で埋葬する場合とではどういった違いがあるかをみてみましょう。
1. 継承するかしないか
一般的なお墓では、家族が代々引き継いでお墓を守っていくものと考えられています。
管理費用などの負担も引き継がれますが、自分の死後も子孫が祀ってくれます。
一方、樹木葬は、自分自身や夫婦、家族で利用するケースがほとんどで、子孫が継承するということはありません。
2. 遺骨の供養方法
お墓の場合、遺骨は骨壺に入れて納骨棺に納め、そのままの状態を保ったままです。
樹木葬の基本的な考えは、死後は自然に還るということですので、遺骨は土に還るものとして管理されています。
個別タイプで埋葬されていても、一定期間後は合祀されます。
樹木葬は基本的に自然志向の考え方がベースになっています。
3. 費用
お墓を新たに購入した場合は、150万~200万円程度が必要になります。
先祖のお墓に入る場合は、購入費は不要ですが、管理費が毎年1万~2万円かかります。
樹木葬の場合は、タイプによって幅がありますが、「20万~80万円」が相場で、毎年の管理費もかかりません。
話題になっている背景
1999年岩手県の大慈山祥雲寺(現:長倉山 知勝院)というお寺が、日本で初めて樹木葬を実施しました。
埋葬した遺骨の周りに樹木や草花を植えることで、里山の緑化と自然志向の考え方がマッチし、大きな話題として取り上げられました。
その後、樹木葬は全国的に広がることになり、2012年には、小平霊園が都立霊園として初めて樹木葬の公募をしました。
初年度の公募では、500体の募集に対し応募が8,169体、倍率は16.3倍となったことで、樹木葬に対する注目度の高さが世に知られることとなりました。
その後も各地で樹木葬は広がり続けており、民間霊園、公営霊園や寺院でも運営されています。
樹木葬の費用相場
樹木葬の費用は、埋葬のタイプによって異なります。
タイプ別の費用相場は以下のようになります。
- 合祀タイプ:8万円~20万円
- 個別埋葬タイプ:30万円~80万円
- 共同埋葬タイプ:15万円〜60万円
他の人の遺骨と混ぜて埋葬する合祀タイプが、一番価格が安く、個別埋葬が一番高額になります。
他の人と一緒に埋葬されながら区分されている共同埋葬タイプがその中間的な金額です。
樹木葬の料金には、「使用料、埋葬料、管理料」が含まれていることが一般的です。
ただし家族で契約している場合は、一人ずつ埋葬料が必要になることや、生前の契約では埋葬するまでの管理料が必要になる、といったようにケースによって費用がかかる場合がありますので、事前に確認しておいたほうがいいでしょう。
こうした金額のほかに、故人の名前を石板などに彫るといったサービスを、オプションとして用意しているところもあります。
申し込みから納骨までの流れ
樹木葬は一般的に「生前に契約」します。
申し込みまでの流れはお墓のケースとだいたい同じです。
1.情報収集
ネット情報を集めたり、墓石店からパンフレット等の資料をそろえていったりして情報収集していきます。
2.現地見学
興味がある施設があれば、予約して実際の様子を見学します。
周りの様子や環境、雰囲気、提供しているプランや交通アクセスなどを確認しておきましょう。
不明なことはその場で質問しクリアにしておきます。
3.契約・入金
現地の雰囲気やプラン内容などが気に入って納得したら、契約書を交わして料金を支払います。
長期のことですので、すぐに契約せずじっくり考えて決めましょう。
4.使用許可証の交付
入金が確認された後、使用許可証が発行されて樹木葬を利用できるようになります。
埋葬までの流れ
樹木葬は、「法律上ではお墓の一種」とされていて散骨とは異なります。
埋葬するまでの手続きもお墓と同様の手続きを踏みます。
1.死亡届を提出
役所に死亡届を出して、火葬許可証を発行してもらいます。
2.火葬
火葬場に搬送し、火葬許可証を提出して火葬してもらいます。
後日、火葬場から埋葬許可証が送られてきます。
3.樹木葬の施設に埋葬許可証を提出
樹木葬の施設側と連絡して埋葬日を決め、遺骨を持っていきます。
施設やプランによって埋葬方法が異なるので、十分に確認をしておきましょう。
樹木葬のメリット
樹木葬には、誰でも利用しやすい様々な「メリット」があります。
維持管理が不要
通常のお墓の場合は、各家庭が定期的に手入れや管理を行いますが、樹木葬の場合は、施設が管理をしているので、清掃など手入れの必要がありません。
一定期間が経過した後、多くの場合は合祀され施設側で供養を続けてくれます。
お墓よりも費用を抑えられる
お墓を新たに購入すると150万~200万円は必要になります。
一方、樹木葬であれば「20万~80万円」が相場で、安いところであれば「一人10万円程度」というところもあります。
管理料や寄付なども不要ですので、費用を抑えて埋葬できます。
宗教・宗派を問わない
樹木葬を行っている多くの施設は、寺院であっても宗教や宗派を問わずに受け付けています。
ただし、一部では条件付きの場合もあるので、確認が必要です。
お参りの対象がはっきりしている
散骨の場合は、粉状にしたお骨を海に撒きますので、遺族は広い海に向かって手を合わせます。
お参りの対象として特定のものがないので、心理的に受け入れにくい人もいるかもしれません。
樹木葬の場合は、シンボルツリーや故人の名を刻んである銘板に向かって手を合わせるので、お参りの対象がはっきりしていて納得感があります。
樹木葬のデメリット
メリットが多い樹木葬ですが、「デメリット」も確認しておきましょう。
遺骨の返還ができない場合がある
合祀タイプの樹木葬の場合は、遺骨を他の人のものと一緒にして埋葬するため、あとから特定の一人分を取り出すということはできません。
個別に埋葬しているタイプでも、骨壺に納められていないところもあり、また一定期間経過後は合祀することが一般的なので、その場合も取り出せません。
将来はお墓に入れて埋葬したい場合は、お骨の扱いをどうするのか検討しておく必要があります。
子や孫に承継できない
樹木葬は、申し込みをした本人や家族に限って利用できるものであり、子や孫が継承することはできません。
子孫に受け継いでほしい場合は、一般的なお墓を考えたほうがいいでしょう。
里山型は交通アクセスがよくない
里山型の樹木葬の施設は、都市部から離れていて交通アクセスがよくない所にあるケースが多いようです。
最寄り駅から山を登っていくような場所にある場合も多く、お参りしにくいこともあるので、事前によくチェックしておきましょう。
樹木葬を選ぶポイント
樹木葬を選ぶ際には、現地でしっかり確認しておく必要があります。
どこを見ておくべきなのか、「見るべきポイント」を確認しておきましょう。
1.雰囲気・環境
樹木葬を行っている施設は、一般的な墓地とは違った雰囲気です。
現地を訪問し、いろいろ見比べてじっくり検討するといいでしょう。
2.埋葬方法
樹木葬の埋葬の方法は、施設やプランによってそれぞれ違っており、お骨の収納方法も骨壺の入れるケースや、そのまま遺骨を埋めるケースなど様々です。
料金によっても変わってくるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
3.お参りの方法
樹木葬の施設では、お参りのやり方にルールが設けてあることが多く、お線香をたかず、お花は決められた場所に備えるといったことが決められています。
お参りの方法も事前に聞いておきましょう。
4.宗教・宗派のルール
一般的に樹木葬の施設では、宗教・宗派を問わず受け入れています。
ただし、寺院が運営している場合には、檀家に入ることが条件であったり、独自のルールが決められていたりするケースがあるので注意しましょう。
5.交通手段
施設までの交通手段は、車を持っていても電車やバスなどの公共交通機関について確認しておきましょう。
高齢になって運転できなくなった時のことも考えておくようにします。
6 管理体制
施設内の管理状況のチェックも忘れずにしておきましょう。
樹木の手入れや区画の整備、掃除がしっかりできているかをみておきます。
また、管理人の人柄もチェックしておくといいでしょう。
樹木葬がある霊園の紹介
樹木葬を行っている施設は年々広がっています。
全国の施設の中からいくつかピックアップして紹介していきましょう。
知勝院
日本初の樹木葬が行われた施設が、岩手県一関市にある祥雲寺というお寺(現在は知勝院)といわれています。
1999年に「花に生まれ変わる仏たち」というコンセプトで、区画ごとに草木をきれいに植栽し、お寺でありながら宗教を問わずに受け入れるということで大きな話題となりました。
その後は全国各地から多くの問い合わせを受けるようになりました。
都立小平霊園
都立小平霊園では、2012年に都立霊園として初めて樹木葬の受け入れをスタートし、大きな話題となりました。
シンボルツリーの下に共同埋葬設備をつけて埋葬していましたが、個別埋葬タイプも受け入れるようになっています。
稲城・府中メモリアルパーク
2015年に稲城市と府中市の2市によって新たに造成された霊園です。
様々なタイプの墓地を備えているのが特徴で、「芝生墓地、普通墓地、合葬式墓地と樹木葬」の墓地の4種類の埋葬施設が用意されています。
横浜市営メモリアルグリーン
メモリアルグリーンは、2006年に開設された公園と一体になった新しいタイプの霊園です。
水と樹木と草花がきれいにデザインされ自然豊かな雰囲気になっています。
霊園内には、「芝生型、合葬式樹木型、合葬式慰霊碑型」の3種類の埋葬施設があります。
シンボルツリーの下の芝生に骨壺を埋蔵する形式の樹木葬を行っています。
樹木葬で注意すべきポイント
樹木葬は新しい埋葬スタイルですので、注意すべき点がいくつかあります。
事前の確認をして、トラブルにならないようにしましょう。
周囲の人の理解を得る
未だに半数近くの人は、樹木葬がお墓を継承しないということで、いいイメージを持っていません。
家族や親せきの中にとって、代々続いてきたお墓を次の代に継承していくのが当然と考えているかもしれません。
樹木葬を選ぶ際には、家族や親せきと十分に話し合いをして、理解を得てから話を進めるようにしましょう。
遺骨は返還されないことを理解する
合祀タイプの樹木葬では、他の人の遺骨と一緒に埋葬するため、後から特定して取り出すことはできません。
もし後からお墓に納めたいとしても、樹木葬で埋葬してしまうと返還されないことを理解しておきましょう。
自分で草木を植えることはできない
樹木葬の中でも、庭園型のようにシンボルツリーの周りにきれいな花を植栽するタイプが人気になっています。
ただし、この場所に自分好みの花が欲しいといって勝手に植えることはできません。
植えてある樹木や花の管理は施設側が行っているので、利用者は手を付けないようにしましょう。
【樹木葬の費用相場とは?】種類別の相場の費用を解説 まとめ
近年人気の樹木葬は、費用相場が「20万~80万円」と手ごろであることも、多くの人から支持されている理由です。
一般的なお墓では代々継承しなければならず、管理や手入れが煩わしいと感じている人も多く、これからも樹木葬を選ぶ人は増えていくでしょう。
ただし、新しい埋葬方法に対して、理解が得られない場合も多いので家族や親せきとしっかり話し合いをしておくことが重要です。