お葬式を遺族や親族を中心にそして隣組などの助けを借りるという、血縁者や地縁者だけで執り行う時代が古き昔になりつつある現代は、その運営の中心が葬儀社に委ねられることになります。
高齢化社会を迎え、亡くなる人が増加傾向にあるため、葬儀ビジネスには多くの会社が参入しています。一方で、お葬式に関するトラブルも増加傾向にあり、国民生活センターに寄せられる相談も年々増加しています。今回は、国民生活センターにはどのような相談が寄せられているのかを調べることで、お葬式でのトラブル回避策を考えたいと思います。
増え続ける葬儀サービスの相談件数
国民生活センターに「葬儀サービス」に関する相談件数は次の表のように増加傾向にあります。
2010年度 | 2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 |
629件 | 688件 | 704件 | 730件 | 724件 | 764件 |
なお、「葬儀サービス」には、葬儀会社が行うお葬式のほかに、火葬場や斎場、僧侶などの宗教者に関連する相談も含まれていますが、冠婚葬祭互助会によるものは含まれていません。
その相談の多くは、やはり料金やサービスの内容に納得できない、というものが多いようです。
具体的なトラブルの事例とそこに潜む背景と回避策
事例1:義父が急死し、慌てて選んだ葬儀社から希望とは異なる契約を強く勧められた
事例2:お葬式の見積を出してくれない。請求書をもらったが高額すぎる
事例3:追加サービスを強く勧められたので了承したら、非常に高額だった
葬儀サービスのトラブルが起きる背景とは
- 不幸は多くの場合急に訪れます。遺族は短い時間で多くのことを判断しなければなりません。
- 葬儀会社をじっくりと吟味して選ぶ時間もありません。
- 限られた時間の中では、葬儀会社と充分な話し合いをする余裕もありません。
葬儀サービスのトラブルを回避するには
- お葬式に関する情報収集をすることです。
- 複数の葬儀社の費用やサービスを比較検討することは、事前でなければできません。
- 葬儀会社と打ち合わせする際には、一人ではなく兄弟や親族、信頼おける第三者などに必ず同席してもらいましょう。
- 見積書は必ず出してもらうように強く要求しましょう。
- 万が一トラブルになったら国民生活センターなどに、すぐに相談しましょう。
なぜトラブルが発生するのか考えてみましょう
お葬式は突然発生する非日常のものです。遺族は身近な人とお別れしなければならない悲しみで、冷静に合理的に判断することが難しい状況にあります。とくに金銭的な判断には注意が必要です。良心的な葬儀会社が多い中に、そのような遺族の心情につけいる良心的ではない葬儀会社が存在しているのも確かなようです。
本来は葬儀会社への依頼、交渉は喪主が中心の喪家が行うものですが、葬儀会社とのやり取りは経済的な行為ですので、冷静な判断力なしでは成り立ちません。とくに最近は葬儀会社の提供するサービスが多様化・複雑化しているため、しっかりと理解し判断できる人が交渉に当たることが必要です。信頼できる親族や第三者に葬儀会社との交渉を委ねることで、冷静で合理的な判断が可能になります。
突然発生するお葬式に備えること。それが最も有効な解決手段だといえます。生前に家族も巻き込んで、お葬式に関する情報収集(終活)が必要な時代になった、ということが言えそうですね。