終活の集大成ともいえるエンディングノートですが、ここの記事でも何度か記しているように、財産分与に関することをエンディングノートに書き残しても法的な効力は生じません。財産に関することは遺言書が唯一故人の意思を行使できるものなのです。でもせっかく書いた遺言書も、間違った方法で書いてしまうと無効と判断されてしまいます。無効になる遺言書とは、どんなものなのでしょうか。
遺言書には3種類ある
遺言書は、普通方式と言われるものと特別方式と言われるものがあります。特別方式とは、危急時、例えば旅客機や船舶の事故に遭ったときに残すもの、あるいは急な負傷、疾病で命を落としそうなときに残すもの、また伝染病などの事由により外部との連絡が遮断された人が残すものなどですが、ここでは一般的な普通方式の遺言書に限定していていきます。
公正証書遺言
遺言する内容を公証人に口授して公証人が作成する遺言書です。公証人が作成するので、遺言書として認定される要件は整っており、無効になることはありません。原本は公証役場に保管され、遺言者には正本・謄本が交付されます。
自費証書遺言
文字通り、遺言者が自筆で書き残す遺言書です。2018年の相続法改正までは、遺言書の全てを自筆(手書き)で書き記す必要がありましたが、法改正によって財産目録に限ってパソコンなど自筆以外の方法で作成することが認められました。なお、自筆証書遺言書は遺言者が遺した正式な遺言書であることを証するための検認という手続きが必要となります。
秘密証書遺言
公証人が関与して作成されますが、公証役場に保管されずに遺言者に戻されます。自筆証書と比べると偽造・変造のリスクはありませんが、かかる費用や手間は公正証書遺言と同じなので、この方式を利用する人はあまりいません。秘密証書にするなら公正証書遺言にするほうが合理的だと思います。
無効と判断される遺言書とは
公正証書遺言と秘密証書遺言は公証人が関与していますので、法律が定める形式で記されるので無効な遺言書となることはないでしょう。自筆証書遺言に無効となる危険性が潜んでいるのです。繰り返しになりますが、遺言書には法定形式があり、それに従っていないと無効(その遺言内容に従う法的な義務が生じない)と判断されてしまいます。無効と判断される主な原因を次にあげてみましょう。
① 自筆ではない
財産目録以外の部分が自筆でなかった(パソコン、あるいは代筆)場合
② 日付がない
年月日が明記されている必要がある
③ 署名または捺印がない
両方揃っている必要がある
④ 複数人の遺言書
遺言書は1人のものでないと認められない
⑤ 訂正方法の誤り
次の法定訂正方法に従っていない
・加筆するときは加筆する場所に吹き出しで加筆
・修正するときは、修正カ所を二重線で消し、修正後の文字を横書きは上に、縦書きは左に書く
・加筆、修正いずれも変更したカ所の近くに訂正印を押印する
・「○字削除○字追加」などの変更内容を書き自署する
⑥ 法的に遺言書を残す資格がないとされている人の遺言
15歳未満や認知症の人など
日付の不備、うっかり月日だけにする人もいるかもしれません。なお年の表記は西暦でも和暦でもどちらでも大丈夫です。署名と捺印のセットも間違えそうなところですが、おそらく訂正の不備が一番多いのではないかと筆者は予想しています。
法的効力がないと言っても、別に裁判所や行政組織(例えば法務局とか)が「この遺言書は無効です」と遺言書を取り上げるようなことはありません。あくまでも、相続人の間で相続に関する合意が形成されなかった場合に、故人の意思として相続人を縛る、守る義務を課す効力があるかどうかです。ですので、もしも法的効力がない遺言書であったとしても、遺された内容に従うかどうかを決めるのは相続人ということになります。