故人が遺した遺産は、現預金、有価証券、不動産など誰がみても財産と分かるものだけでなく、例えば家具や家電などの家財道具などは家庭用財産と言われ相続税の対象となります。今回は家庭用財産とその相続税について調べてみましょう。
相続税の対象となる家庭用財産とは
故人が購入した物、故人が相続や譲渡・贈与を受けた物は全て家庭用財産です。例えば次にあげる物などの全てが財産評価上は一般動産というカテゴリに属し、相続するときは財産としての評価をしなければなりません。
・家具
・冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの家電製品
・パソコン、スマートフォンなどデジタルデバイス
・書籍
・衣類、バッグ、靴など
・着物
・カメラ
・時計
・自動車、オートバイ
・貴金属、アクセサリー
・書画・美術品・骨董品
・銃や刀
・花卉
などなど
評価方法と評価額
これらの家庭用財産は、1個または1組ごとに相続時の時価で評価します。もしも時価が明らかではない場合には、購入時の価額から経年に応じた償却額(価値の目減り額)をマイナスして相続税評価額とします。例えばパソコンであれば、耐用年数の4年を経過すると償却が終了して評価額はゼロと評価します。このように家庭用財産は相続税の対象ではありますが、そのほとんどは価値がないと判断されて実際には相続税の対象にならないことがほとんどです。しかし1つ1つの動産を、購入時からの経過年数を調べて償却額を計算し相続時点での評価額を算出するのはあまりにも大変です。そこで、評価額が5万円以下のものについては一括して評価することが認められています。つまり明らかに5万円以上の価値があると認められる(誰がみても、ということですね。最終的には税務署が判断するので。)物以外は「家財道具一式○万円」として相続財産に計上します。この○万円ですが一般的には5万円から30万円程度といわれています。ミニマムの5万円が一人暮らしで物がない場合、広い家で物がたくさんある場合で30万円程度計上する、といったイメージでしょうか。
価値があるものは個別評価が必要
このような一般動産の多くは購入後直ぐに価値が目減りしますので、上で記したように一括評価として問題ないのですが、上の一覧にも注意が必要な物、明らかに5万円以上の価値がある物も存在します。まず、自動車やオートバイはリユースマーケットで売価がつくケースが多いので個別に評価が必要です。この評価額は車種、年式に応じたマーケット価額を計上すれば良いでしょう。貴金属、美術品、骨董品は予想以上に高額な価値を有する場合があります。テレビ東京の人気番組「開運なんでも探偵団」では、所有者の自己評価額より実際の価値が一桁多かったなんてケースも結構頻繁にありますよね。「自分では二束三文と思っていたら、とんでもない価値があった」なんてことが相続後に判明したら「想定外の相続税を納めなければいけない」なんてことにもなりかねません。特に美術品、骨董品は興味関心がなければ、その価値を判断する目が養われていないので、例えば「明確にレプリカ」であることが確かでない場合などは、専門家に鑑定してもらうことをお勧めします。
一括にするには「少しリスクがあるかも」な物
ちょっと判断に迷うのが、着物、カメラ、時計、花卉です。明らかに普通の物や日常品であれば問題ないのですが、中には購入時の価額がかなり高額で相続時点でも5万円超の評価を受ける物もあるでしょう。これらも、やはり目利きでなければその価値を判断できないので専門家の鑑定を受けることをお勧めします。ところで、故人が何らかのコレクターであった場合に、そのコレクションはどう考えれば良いでしょうか。例えば、古書、古いおもちゃとかレコードなどの中にはマニアには垂涎の品があって、一部の特殊なマーケットでは凄い価値がつくケースもあります。しかしその価値はその価値を認めるマニアの中だけのものです。一般的には無価値であれば、遺品として相続して引き続き所有、保管する分には上で記した家財一式○万円の中に含めてしまって問題ないでしょう。ただし相続後に売却したら高額で売れてしまった、その場合には個別に評価に加える必要がでてきます。
美術品や骨董品などが実は凄い価値がある財産だった、などという場合に相続税を納めることができないケースも出てくるかもしれません。その場合は納税するために売却して税の支払いに充てるという方法のほかに、自分自身が興味なければ美術館などに寄付をするという方法もあります。相続税を申告すべき期限(相続開始から10カ月)までに寄付を行えば、相続税の課税対象から除外されることになります。