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おひとりさまだからこそ終活を

記事公開日:2020.08.16/最終更新日:2023.04.12

読了予測:約5分

高齢化社会といわれますが、現在の日本は一人暮らし高齢者多数社会とでもいえる状況になっているようです。厚生労働省が毎年発表している「国民生活基礎調査」という統計があります。3年ごとに大規模調査を行い、中間年は世帯と所得だけに絞った簡易調査を行っています。2019年の調査で発表された、世帯数と世帯人員の状況をみると、65 歳以上の高齢者がいる世帯は 2,558 万 4 千世帯で全世帯の 49.4%を占めています。高齢者化社会であることを改めて実感する数字です。さらに、その中で「単独世帯(一人暮らし高齢者ですね)」はなんと736 万 9 千世帯!全世帯の 28.8%にもなることが分かりました。つまり、今から遠くない未来に、これだけの数の高齢者が一人で死を迎える可能性があることになります。無論、現在一人暮らしでも、別に暮らしている家族がいて、病気やケガなどの時も含めていざというときの面倒は見てくれる、という高齢者も多いでしょう。しかし、もしも世話をしてくれる家族がいない場合に、そのまま亡くなってしまったらどうなるのでしょうか。

自治体が対応することになるのですが

引き取り手がないご遺体は、行政(自治体)が対応することになります。最近では、家族や親族であってもご遺体の引き取りを拒否するケースも増えているようです。いずれの場合も、「埋火葬を行う者がいない」死亡者となり「孤独死」として扱われて市区町村が責任を負うことになります。その場合の費用は法律で次のような手順を踏むことにされています。

① 遺留品中に現金や有価証券があればそれを支出した費用に充てる

② ①で不足した場合は市区町村費から立て替える

③ 相続人が判明している場合は、相続人に支出した費用の弁償を請求する

④ 弁償できる相続人がいない場合、遺留品を売却して売却益を弁償に充てる

⑤ 最終的に弁償されなかった費用は、市区町村(政令指定市、中核市は自分の費用でまかなう)が属する都道府県がこれを弁償する

この⑤のケースが増加し続けているために、自治体の予算をかなり圧迫しているのだそうです。

また、埋火葬含めたすべての対応をするために、自治体の職員は次のような実務を行う必要があります。

① 故人の遺言が遺されていないか調べる

② 故人を引き取ってくれる家族、親族がいないか調べて、引き取りの交渉をする

③ ①も②もない場合に、自治体が埋火葬をする

自治体職員のマンパワーもかなり削られることになります。

自治体の予算、マンパワーも課題ではありますが、自治体にとって一番悩ましいのは故人に尊厳ある最期を迎えさせてあげることができない、もどかしさだそうです。

増える自治体の終活サポート

神奈川県横須賀市でスタートした、自治体による終活支援が広がりをみせています。神奈川県大和市、綾瀬市、千葉県千葉市、愛知県北名古屋市、兵庫県高砂市などが相次いてサービスを始めています。横須賀市のサービス「エンディングサポートプラン」は、葬儀社とアライアンスを組み葬儀の生前契約のサポート、本人に対する定期的な安否確認、延命治療の確認とかなり盛りだくさんなサービスです。大和市も同様に葬儀の生前契約サポート、親族などの連絡先登録といったメニュー。自治体により、若干異なりますが、本人の安否を確認しつつ、何かあったときは生前に本人が望んだ形で最期を迎えられるようにする、というところは共通かと思います。一見すると自治体の仕事が増えるように思えますが、このサービスで生前契約をサポートすることで埋火葬の費用が自治体の予算からの支出ではなくなるわけです。一人暮らし高齢者多死社会を迎えるとしたら、自治体としては手をこまねいていることはできないでしょう。

行政サービスがない場合はエンディングノートを

上記のような終活支援までは厳しいが、エンディングノートは無料配布をしている、という自治体も増えています。エンディングノートが遺されていたら、あとを託したい家族や親族の有無も、故人がどのような最期を希望しているのかも分かるので、自治体も大変助かるのだと思います。次のようなことだけでも簡潔に遺しておくことが、周囲に少しでも迷惑をかけなくて済むことに繋がります。

① 終末医療や介護についての希望

② 財産の有無や遺品の処分方法の希望

③ 葬儀の希望(葬儀費用をどこからいくら支出できるのかも)

④ 墓の希望(費用についても)

死後の事務を委任することも考えておきましょう

死後には実に多くの処理が必要な、例えば次のような事務があります。

① 親族、知人への連絡

② 行政官庁等への諸手続き

③ 葬儀、埋葬、お墓に関する手続き

④ 医療費、入院費等の清算

⑤ 老人ホーム等の施設利用料等の精算

⑥ 生活用品、家財道具等の整理・処分

⑦ 住居の処分、解約

⑧ 公共サービスなど享受している各種サービスの解約、清算

⑨ インターネット上のアカウント削除(解約、退会)

⑩ デジタル遺品の整理

故人が一人暮らし高齢者の孤独死だった場合は、自治体には①から③を行う義務があります。しかし、それ以外の事務を自治体は原則行いません。終活サポートサービスにも、ここまでのメニューは備えられていません。やるべき人が誰もいないと、結局多方面に迷惑をかけることになる可能性が高いです。そこで最近では、弁護士事務所、司法書士事務所、行政書士事務所などが死後の事務委任契約のサービスを始めています。まだできたてのサービスで、規制するための法律も監督官庁も存在しませんし、費用が高額だという話も聞きます。しかし、現代社会には必要なサービスなので、これから進化することは間違いないと思います。有償にはなりますが、自分の死後の事務を誰かに託しておく、ということも一人暮らしの高齢者の方は考えておいたほうが良いかと思います。

 

一人暮らし高齢者の多死社会を迎えるかもしれない日本です。

「おひとりさま」だからこそ、是非ともこれから先のことを考てみてはいかがでしょうか。