また衝撃的な埋葬方法が現れました。それが「自然還元葬」。遺体を微生物の力で分解して堆肥にして土に還すという埋葬方法です。2019年4月にアメリカワシントン州の上院と下院で法案が可決され、5月21日に州知事が署名したことで成立し、2020年5月1日から施行されます。
アメリカの埋葬事情
アメリカの埋葬方法は土葬と火葬の割合が、意外にも半々くらいだそうです。ゾンビ映画の影響でしょうね、アメリカのお墓全てに遺体が埋まっているものだと思いこんでいました。土葬はコストがかかる(お棺ですね)ことと、遺体に施すエンバーミング処理が土壌汚染のもとになることで環境問題が顕在化しており、近年は火葬が増えているのだそうです。しかし火葬するには当然のことながら火葬場が必要で、日本と比べて広大な国土を持つアメリカといっても都市部での火葬場の立地確保は優しいことではないようです。そのためにこの「自然還元葬」のような場所も費用もかからない埋葬方法が考案されだしている、ということです。
エコロジストの執念
「自然還元葬」を考案したのは、ワシントン州のカトリーナ・スペードさんという女性です。彼女は地球環境に優しい遺体処理の研究を長年続けてきたという、まぁエコロジストですね。科学者と共同による『遺体が土の中でどのように分解されるか』という研究によって『人が分解されて堆肥となった土は州や国の安全基準を満たしている』ことを明らかにしました。それにしても実験には本当の遺体を使ったのでしょうが、個人的にはちょっと考えにくいことではあります。
この結論を手にして州議会に「自然還元葬」の合法化を訴えて、ついに遺体をリサイルすることを認めさせたのです。「有機還元葬」は専用の施設で行われ、1~2カ月かけて微生物によって分解され堆肥になります。堆肥となった土は、遺族が持ち帰えることもできますし、遺族が要らないといえば州内で希望するところで堆肥として使用されるようです。
日本での反応は否定的
アメリカ人の死生観はよく分かりません。でも無宗教・無信仰がほとんどの日本人と違って、熱心なキリスト教徒が多くユダヤ教徒も多いお国です。キリスト教やユダヤ教的にはOKなのでしょうか?
このニュースが流れた後にTwitterなどでも議論が交わされていました。概ね「日本には馴染まない」という反対論者が多かったですね。確かに、散骨すら条例で禁止をする自治体があるくらいです。遺体が源となった堆肥をリサイクルして農園、菜園に撒くという発想を「良し」とする風土、環境にはならないだろうと思います。近年日本人の死生観が変わってきたといえども、死者や遺体に対する畏れ、また穢れという発想は失われていないと思います。これは宗教観とは全く別ものだと筆者は考えています。ですので、日本において「自然還元葬」が合法化される可能性は限りなく低いでしょう。
しかし、墓地不足は深刻な問題となっています。埋葬の形が従来から大きく変わっていくことは避けられない状況です。今後は、樹木葬が中心になるのか、合葬墓と永代供養墓の組み合わせなのか、それとも全く異なる埋葬方法が考案されるのか。10年、20年、30年後の日本の埋葬はどうなっているでしょう。