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互助家のひとびと

第175話~第177話 春の日の胸騒ぎ

★第175話「春の日の胸騒ぎ(3)」

おじいちゃんが土屋さんの入院を知ってから数日後、おじいちゃんは散歩の途中に土屋さんの奥さんと愛犬・ユキを見かけなくなりました。「土屋さんは大丈夫だろうか…」と心配を募らせるおじいちゃん。タロもユキに会えず、どこか寂しそうです。

おじいちゃんはタロの頭をなでながら「タロ、今日もユキに会えなかったなぁ。ひょっとしたら、奥さんが忙しくて散歩の時間を変えたのかもしれないな」

そんなある日のこと、土屋さんの奥さんから電話がかかってきました。

おじいちゃん「奥さん、しばらくぶりですね。最近、お姿を見かけなかったから、どうされているのかと思っていたんですよ」

穏やかな笑みをたたえて話すおじいちゃん。しかしその直後、顔色が一変。入院していた土屋さんが亡くなったというのです。(つづく)


★第176話「春の日の胸騒ぎ(4)」

ある日突然、おじいちゃんの元に、土屋さんの訃報が届きました。

おじいちゃん「え…、そうでしたか…。心からお悔やみ申し上げます。奥さん、お辛いでしょうに、ご連絡恐れ入ります。今後の日程などはお決まりでしょうか」

おじいちゃんはメモをとり、程なく電話を切ると、がっくりと肩を落としました。おばあちゃんはそんなおじいちゃんの悲しみに寄り添い、「とても残念ね…」と声を掛けます。

おじいちゃん「ああ…。なんだかんだ会えずじまいで、逝ってしまった。最後に会った土屋さんは、どこか悪いようには見えなかったんだがなぁ…」

やがておじいちゃんは「タロ、土屋さんのお通夜に行ってくるよ」とタロに声を掛け、おばあちゃんと共に出掛けていきました。(つづく)


★第177話「愛犬とご主人様の別れ(1)」

おばあちゃんと共に、土屋さんのお通夜に向かったおじいちゃん。会場に着くと、裏手に繋がれた土屋さんの愛犬・ユキを見つけました。「あれ、ユキじゃないか…」

ユキはおとなしく座り、一点を見つめて微動だにしません。おじいちゃんにはユキが喪に服しているように見え、近づくことがためらわれました。

おばあちゃん「ユキにも最期のお別れをさせたいと、奥さんが連れてきたんじゃないかしら」

おじいちゃんはユキの健気な姿から忠犬ハチ公の話を思い出しました。(そうだ。ハチはご主人様が亡くなったことを知らず、毎日駅まで迎えに行ったんだった…!)

「そうだな。ユキもきちんとお別れをしなければ、土屋さんの帰りを待ってしまうかもしれない」とおじいちゃんは納得し、ユキを優しく見つめました。(つづく)

 

 
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